コラム

2025.10.31

インビザラインでできない歯並びとは?治せるケース・治せないケースを解説

インビザラインでできない歯並びとは?治せるケース・治せないケースを解説

インビザラインは、透明で目立ちづらく取り外しもできる矯正法として支持されています。一方で、歯や骨格の状態によってはマウスピース単独では難しいケースもあります。
本記事では、治せる・治しにくい歯並びの見極めと、ワイヤー矯正・コンビネーション矯正の選択肢、診断のポイントまでわかりやすく解説します。

1.インビザラインで治せる・治せない歯並びとは?

「目立ちづらく快適に矯正できる」と人気のインビザライン。しかし、すべての歯並びに対応できるわけではありません。まずは、どのような歯並びに向いていて、どのようなケースでは難しいのかを正しく理解することが大切です。

マウスピース矯正の得意・不得意とは

インビザラインは、透明なマウスピース(アライナー)を段階的に交換し、少しずつ歯を動かしていく治療法です。装置が目立ちにくく、取り外しができるため、食事や歯みがきも普段どおり行えるという利点があります。
しかし、マウスピース矯正は「歯の動かし方」に一定の制限があります。歯を大きく動かしたり、回転させたり、根の角度を精密にコントロールしたりすることは、ワイヤー矯正ほど得意ではありません。つまり、「軽度の歯列不正」には効果的でも、「骨格的なズレが大きい症例」や「重度の噛み合わせの不調和」には限界があるのです。

治療できる歯並びの一例

インビザラインで比較的良好な結果が得られるのは、以下のような軽度〜中等度の歯並びです。

・前歯が少し重なっている「軽度の叢生(そうせい)」
・歯と歯の間にすき間がある「空隙歯列(くうげきしれつ)」
・軽度の出っ歯(上顎前突)や受け口(反対咬合)
・歯列全体をわずかに整える軽い不正

このようなケースでは、マウスピースの特性を活かしながら、目立ちづらく快適に歯並びを整えることができます。

治療が難しい歯並びの一例

一方で、次のようなケースはインビザライン単独では治療が難しいとされています。

・歯が大きく重なり合う「重度の叢生」
・噛み合わせが極端にずれている「骨格性の不正咬合」
・奥歯しか噛み合わない「開咬」や「過蓋咬合」
・抜歯が必要で大きな移動距離を伴うケース

これらは、マウスピースだけでは十分にコントロールしきれず、ワイヤー矯正を併用するか、ワイヤー矯正単独の方が適している場合があります。

 

適応を見極めることが大切

「自分はインビザラインでできるのか」「難しい歯並びなのか」を判断するためには、歯科医師による正確な診断が欠かせません。歯列の状態や顎の骨格、噛み合わせ、歯の傾きなどを総合的に分析したうえで、適した矯正方法が選ばれます。
また、インビザラインの技術も年々進化しており、以前は治せなかったケースでも対応可能になることがあります。重要なのは、無理にインビザラインで治すのではなく、最も安全で確実な方法を選ぶことです。

2.インビザラインの仕組みを理解しよう

「インビザラインはどうやって歯を動かすの?」という疑問を持つ方は多いでしょう。
一見ただの透明なマウスピースに見えますが、その中には精密な3D設計と歯科医学的な理論が詰まっています。ここでは、インビザラインがどのように歯を動かしていくのか、その仕組みをやさしく解説します。

透明なマウスピースが歯を動かす仕組み

インビザラインは、専用の3Dスキャナーで患者様の歯列を立体的にデータ化し、理想の歯並びまでの「動き方」をシミュレーションします。
このデータをもとに、数十枚のマウスピース(アライナー)が作製されます。1ステージでの移動量は概ね0.2〜0.25mm程度を想定しますが、部位や計画により異なります。
つまり、1枚のマウスピースでは大きく歯を動かすことはできませんが、連続して少しずつ交換することで、計画通りに歯が正しい位置へ導かれていくのです。

「ワイヤー矯正との違い」を知る

従来のワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーで歯を直接的に引っ張って動かします。一方、インビザラインは「歯を押す力」を利用して少しずつ移動させるのが特徴です。
力のかかり方の違いから痛みが少ない傾向がありますが個人差があります。金属を使わないため口内の刺激は少ない傾向ですが、必ずではありません。さらに、マウスピースを取り外して食事や歯みがきができるため、清潔な口腔環境を保ちやすい点も大きな利点です。
ただし、マウスピース矯正は「装着時間を守る」ことが成功のカギになります。1日20〜22時間の装着が必要で、自己管理が不十分だと歯の動きが計画通りに進まなくなる可能性があります。

歯を効率よく動かすサポート技術

近年では、インビザラインでもより精密な動きを実現するための補助装置が導入されています。
そのひとつが「アタッチメント」と呼ばれる小さな突起です。歯の表面に樹脂で付けられ、マウスピースの力をより正確に伝える役割を果たします。
また、必要に応じて「顎間ゴム(エラスティック)」を併用し、上下の噛み合わせを整えることもあります。これらの工夫により、従来では難しかったケースにも対応できるようになってきました。

進化するデジタル矯正

インビザラインは、AI技術を活用した歯の動きのシミュレーションが進化しており、歯科医師は治療前に「歯がどう動くか」を3Dで確認しながら計画を立てます。
患者様も治療開始前に完成イメージを視覚的に確認できるため、モチベーションを保ちながら治療を続けやすい点も特徴です。
このように、インビザラインは単なる透明なマウスピースではなく、精密な設計と管理のもとに成り立つ医療的な矯正システムです。

インビザラインについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

3.インビザラインで治せる代表的な歯並び

インビザラインは、透明で目立ちづらく、取り外しもできる新しい矯正方法として人気があります。とはいえ、「どんな歯並びなら治せるのか?」という点が気になる方も多いでしょう。
ここでは、インビザラインが得意とする代表的な歯並びのタイプを具体的に紹介します。

軽度の叢生(そうせい)──デコボコした歯並び

最も多いご相談が「前歯が少し重なっている」「歯がガタガタして見える」といった軽度の叢生です。
インビザラインでは、歯を少しずつ移動させることで、無理なく整った歯列へ導くことが可能です。マウスピースを段階的に交換しながら歯を動かすため、痛みも比較的穏やかで、装置が目立ちにくい点も魅力です。
歯と歯の間にわずかなスペースを作る「IPR(エナメル質の微調整)」を行うことで、自然な見た目のまま歯並びを整えることもできます。

すきっ歯(空隙歯列)──前歯のすき間を改善

笑ったときに前歯のすき間が気になる「すきっ歯」も、インビザラインで改善が期待できるケースです。
マウスピースで歯を内側や外側に微調整しながら、隙間をバランスよく閉じていきます。
すき間を詰めるだけでなく、全体の噛み合わせや歯の傾きも同時に整えられるため、見た目の印象が大きく変わることも少なくありません。
ただし、歯ぐきの位置や骨格の関係で過度に広い空隙がある場合は、追加の治療を組み合わせることもあります。

軽度の出っ歯・受け口──前後のバランスを整える

「少し出っ歯気味で気になる」「下の歯が少し前に出ている」という軽度の前後的なズレも、インビザラインで対応可能な場合があります。
アタッチメントや顎間ゴム(エラスティック)を併用することで、上下の歯をバランスよく動かし、噛み合わせを整えます。
ワイヤー矯正ほど強い力をかけられない分、計画的に小さな動きを積み重ねていく点が特徴です。
また、見た目だけでなく「前歯で噛み切れるようになった」「発音がしやすくなった」など、機能的な変化を感じる方もいます。

歯列のねじれ・軽い噛み合わせ不良

前歯の角度が少し傾いている、上下の歯の当たり方がずれているなどの軽度な噛み合わせ不良も、インビザラインで調整できることがあります。
これらは一見小さな問題に見えても、放っておくと歯の摩耗や顎への負担につながる場合もあるため、早めの改善が理想的です。

 

まずはお気軽にご相談ください

 

4.インビザラインで治せない(または難しい)歯並び

インビザラインは多くの歯並びに対応できるよう進化していますが、すべての症例に適しているわけではありません。歯や骨格の状態によっては、マウスピース単独での矯正が難しいケースもあります。ここでは、インビザラインが苦手とする代表的な歯並びと、その理由を詳しく見ていきましょう。

重度の叢生(そうせい)──歯が大きく重なり合うケース

歯の生えるスペースが極端に不足している「重度の叢生」では、インビザライン単独で歯を十分に並べることが難しい場合があります。
マウスピース矯正は、少しずつ歯を動かしてスペースを作りながら整えていきますが、移動量が大きすぎるとマウスピースの弾性力だけでは制御しきれません。
このような場合は、抜歯を伴う矯正やワイヤー矯正を併用して歯列全体のバランスを取る必要があります。

開咬(かいこう)──奥歯しか噛まない状態

上下の前歯が噛み合わず、奥歯だけが当たる「開咬」も、インビザラインでは難易度が高い症例の一つです。
マウスピース矯正は歯の「傾き」を調整することは得意ですが、上下の顎の垂直的な位置関係を大きく変えることは苦手です。
骨格的な開咬の場合は、ワイヤー矯正や外科的矯正を併用し、噛み合わせ全体の高さや顎の位置をコントロールする必要があります。

骨格性の不正咬合──顎のズレが原因の場合

歯の位置だけでなく、顎そのものが前後・左右にずれている「骨格性の不正咬合」は、インビザラインの適応外となるケースがあります。
たとえば、下顎が大きく前に出ている受け口(下顎前突)や、顎が左右にずれている交叉咬合などは、歯だけを動かしても根本的な改善が難しいためです。
こうした場合は、外科的なアプローチ(外科矯正)や、骨格に合わせたワイヤー矯正を検討することになります。

大きな歯の移動・回転が必要なケース

歯を大きく動かしたり、180度近く回転させたりする必要があるケースも、マウスピースだけではコントロールが難しいとされています。
インビザラインでは、歯に力をかける方向が限られるため、複雑な動きには対応しづらいのです。
特に犬歯の位置や角度を大きく変える治療では、ワイヤー矯正の方が精密な調整が可能です。

抜歯が必要な症例

歯列全体のバランスを取るために抜歯が必要な場合、インビザラインでも対応可能なケースは増えていますが、すべてではありません。
抜歯後のスペースを閉じる際には、歯を前後・上下に大きく動かす必要があり、歯根の角度や噛み合わせを細かく調整するにはワイヤー矯正の力が必要なこともあります。

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5.ワイヤー矯正が必要になるケース

インビザラインは年々進化しており、従来は難しいとされていた症例にも対応できるようになっています。
しかし、すべてのケースをマウスピースだけで治せるわけではありません。歯の移動量が大きい場合や、細やかな角度調整が必要な場合には、ワイヤー矯正の力が欠かせないこともあります。
ここでは、実際にワイヤー矯正が適しているケースと、その理由を解説します。

歯を大きく動かす必要がある場合

歯を数ミリ以上移動させるようなケースでは、マウスピース矯正では力が届きにくくなります。
たとえば、抜歯後のスペースを閉じるために歯を大きく引っ張るような動きや、奥歯を後方に移動させる「遠心移動」などが代表的です。
ワイヤー矯正は、歯全体に連続的な力をかけて動かすことができるため、大きな移動や方向転換に強みを持ちます。
また、歯根(歯の根の部分)を立体的に動かすことができるのもワイヤー矯正の特徴です。インビザラインでは歯冠(見える部分)を中心に力が伝わるため、根のコントロールが難しい場面ではワイヤーが有効です。

回転や傾きを正確に直したい場合

歯が大きくねじれている、または傾いて生えている場合も、ワイヤー矯正が向いています。
特に犬歯や小臼歯のように根が長く太い歯は、マウスピースの弾性だけでは十分な回転力をかけにくいためです。
ワイヤー矯正では、ブラケットとワイヤーの形状記憶特性を利用し、3次元的な力で歯を正しい角度へと導きます。
こうした微調整の精度は、審美的な仕上がりや噛み合わせの安定性にも影響するため、歯科医師が最も慎重に判断するポイントです。

骨格や噛み合わせのズレが大きい場合

骨格的な問題を伴う「骨格性の不正咬合」や、上下の歯の噛み合わせに大きなズレがある場合には、ワイヤー矯正が中心となります。
マウスピースでは顎の位置をコントロールすることが難しく、顎の成長や骨格の形状そのものを調整する必要がある場合には、より強い力と方向性をコントロールできるワイヤー矯正が適しています。
また、歯列全体のバランスを整える際には、顎間ゴムや補助装置を併用しながらワイヤーで精密に噛み合わせを整えることが可能です。

長期的な安定性を重視する場合

歯並びは見た目だけでなく、噛み合わせや歯の寿命にも影響します。
一時的に歯が並んでも、噛み合わせが不安定なままでは後戻りのリスクが高まります。
ワイヤー矯正では、歯の根の方向まで調整できるため、治療後の安定性が高く、長期的な維持を目指せる点も大きな利点です。

このように、ワイヤー矯正は「力が強い」「自由度が高い」「精密なコントロールが可能」という特性を持っています。
一方で、見た目の問題や清掃のしづらさなど、デメリットもあるため、最近では「インビザラインとワイヤーを組み合わせる治療」が注目されています。

ワイヤー矯正(表側矯正)とは?特徴とインビザラインとの違いについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

6.インビザライン+部分ワイヤーの選択肢(コンビネーション矯正)

「インビザラインでは難しいけれど、できれば目立たずに矯正したい」──そんな希望を持つ方は少なくありません。
最近では、インビザラインとワイヤー矯正の良いところを組み合わせた治療法が注目されています。これが「コンビネーション矯正(ハイブリッド矯正)」と呼ばれる新しいスタイルです。

コンビネーション矯正とは?

コンビネーション矯正とは、インビザラインの透明なマウスピースと、部分的なワイヤー装置を併用する方法です。
たとえば、前歯はインビザラインで目立ちにくく整えながら、奥歯や噛み合わせの調整にはワイヤーを使うといった形です。
治療の初期・中期・後期のどの段階で併用するかは症例によって異なり、医師が歯の動きを細かく設計して決めていきます。
この方法により、「見た目への配慮」と「歯の正確なコントロール」という一見相反する要素を、両立することが可能になりました。

コンビネーション矯正について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

どんな症例に向いている?

コンビネーション矯正は、以下のようなケースで特に有効です。

前歯のねじれや叢生を目立たず整えたいが、奥歯の噛み合わせにズレがある
抜歯を伴う治療で、歯の大きな移動が必要
マウスピースだけでは動かしにくい犬歯や歯根の角度を調整したい
治療後の仕上がりをより精密にしたい

つまり、「インビザライン単独では難しい」と判断された症例でも、部分的なワイヤーを併用することで治療の選択肢が広がるのです。

見た目と快適さを両立できる

部分的にしかワイヤーを使わないため、従来の全顎ワイヤー矯正と比べて見た目の負担が少なく、日常生活への影響も最小限に抑えられます。
また、食事中や歯みがきの際はマウスピースを外せるため、衛生面の管理もしやすいのが特徴です。
「人と話す仕事をしている」「接客業で目立つ装置は避けたい」といった方にも選ばれやすい治療法です。
さらに、必要な部分のみワイヤーを併用する設計により、症例によっては治療期間が短くなることもあります。インビザラインのデジタル設計とワイヤー矯正の力を組み合わせることで、効率的でバランスの良い歯の動きが実現できます。

医師の診断と設計力がカギ

コンビネーション矯正は、2種類の装置を使い分けるため、歯科医師の診断力と設計の正確さが非常に重要です。
どのタイミングでワイヤーを使うか、どの歯をマウスピースで動かすかを誤ると、計画通りに進まないリスクがあります。
そのため、歯科医師が3Dシミュレーションや模型を使って、事前に歯の動きを緻密に設計することが欠かせません。

7.インビザラインが適しているか見極めるポイント

「自分の歯並びはインビザラインで治せるのだろうか?」
多くの方がまず最初に抱く疑問です。インビザラインは幅広い症例に対応できるようになりましたが、すべての歯並びに万能というわけではありません。
ここでは、インビザラインが適しているかを判断するために歯科医院で行われる検査や診断の流れ、そして患者様自身が知っておきたいポイントを紹介します。

精密検査で歯と顎の状態を把握

インビザラインの適応を判断するうえで最も重要なのが、「現状の正確な把握」です。
まず、歯科医院では以下のような検査を行います。

口腔内スキャン(iTeroなど):歯並びを3Dでデータ化し、ミリ単位のズレまで把握します。
X線・CT撮影:骨の厚みや歯根の角度、顎関節の位置を確認します。
写真撮影・咬合チェック:噛み合わせのバランスや筋肉の動きを確認します。

これらのデータをもとに、歯科医師が「マウスピースで動かせる範囲」や「骨格の影響の有無」を総合的に判断します。

3Dシミュレーションで未来の歯並びを確認

インビザラインの特徴のひとつが、治療前に「歯の動き方」を3Dで確認できる点です。
専用のソフトウェアで歯の位置を段階的に動かし、最終的な歯並びの予測図を表示します。
患者様自身も完成イメージを見られるため、ゴールを共有しながら治療を進められるのが大きなメリットです。
ただし、シミュレーションはあくまで理想的な動きを想定したものであり、実際の治療結果とは差が生じることもあります。
そのため、経験豊富な歯科医師が「シミュレーション通りに動かすための工夫」を設計することが重要です。

医師の診断力が成功の鍵

インビザラインは、マウスピースそのものが歯を治すわけではありません。
歯科医師が設計し、治療経過を細かく管理することで初めて効果を発揮します。
同じマウスピースでも、どのように使用するか(アタッチメントの配置、顎間ゴムの併用など)によって結果が大きく変わります。
また、治療を進める中で歯の動きにズレが生じた場合は、追加のスキャンを行って再設計(リファインメント)することもあります。
こうした経過管理力が、治療成功の大きなポイントです。

「インビザラインありき」ではなく「最適な方法を選ぶ」

最近では、「できればインビザラインで」と希望される方が増えています。
しかし、重要なのは「無理にマウスピース矯正を選ぶこと」ではなく、「自分に最も適した方法を選ぶこと」です。
骨格や噛み合わせによっては、ワイヤー矯正やコンビネーション矯正の方が確実に仕上がるケースもあります。
信頼できる歯科医院では、患者様の希望を尊重しながらも、医学的根拠に基づいた最適な提案をしてくれます。
治療法のメリットだけでなく、リスクや限界についてもきちんと説明を受けられることが大切です。

8.治せないと思っていた歯並びも、技術で変わる時代へ

「インビザラインでは難しい」と言われた症例でも、今はあきらめる必要がない時代になっています。
デジタル技術と矯正理論の進歩により、以前はワイヤー矯正が主流だった複雑な症例にも、マウスピース矯正が応用できるようになってきました。
ここでは、インビザラインがどのように進化し、治療の幅を広げてきたのかを紹介します。

AIと3Dシミュレーションがもたらす精密な設計

従来の矯正治療では、歯の動きは歯科医師の経験と勘に頼る部分が大きく、シミュレーションも平面的なものでした。
しかしインビザラインでは、AI技術を活用した3D治療計画ソフトが導入されています。
これにより、歯1本1本の移動方向・角度・速度をミリ単位でシミュレーションでき、顎や筋肉のバランスまで考慮した治療設計が可能になりました。
また、歯の動きを「予測」するだけでなく、経過をデジタルで記録・比較できるため、ズレが生じた際も早期に修正が行えます。
これまで想定外の動きとして扱われていたケースも、データに基づく再設計によって精度高く対応できるようになっています。

アタッチメント・顎間ゴムで動かせる範囲が拡大

マウスピース矯正の弱点とされていた「力のかけにくさ」も、近年の技術進化で克服されつつあります。
代表的なのが、歯の表面に設置する小さな突起「アタッチメント」です。
これにより、マウスピースの力をピンポイントで伝えられるようになり、歯の回転や引き下げといった複雑な動きにも対応できるようになりました。
さらに、「顎間ゴム(エラスティック)」を併用することで、上下の噛み合わせや前後的なズレの改善も可能に。
ワイヤー矯正に近い力を発揮できるようになったことで、対応できる症例の幅は格段に広がっています。

デジタル技術によるチーム医療の進化

インビザラインの治療データはクラウドで管理され、担当チーム間で適切に情報共有できます。
これにより、症例の解析や治療計画の精度が高まり、より安全で効率的な治療が実現しました。
また、治療経過をデジタルで可視化できるため、患者様も「自分の歯がどのように動いているのか」を理解しながら前向きに治療を続けることができます。
このように、デジタル技術の進化は単に便利さをもたらすだけでなく、安心感と信頼性の向上にもつながっています。

9.歯並びと歯ぐき、両方を守るには

矯正治療の目的は「見た目を整えること」だけではありません。
本来の目的は、噛む・話す・笑うといった口の機能を守り、健康な歯ぐきを維持することにあります。
どんなに美しい歯並びを手に入れても、歯ぐきの健康が損なわれてしまえば、その美しさを長く保つことはできません。
ここでは、歯並びと歯ぐきの両方を守るために大切な考え方を紹介します。

正しい歯並びは歯ぐきの健康を支える

歯が重なっていたり、噛み合わせが不均一だったりすると、ブラッシングが難しくなり、歯垢(プラーク)が溜まりやすくなります。
その結果、歯ぐきに炎症が起こりやすくなり、歯周病のリスクが高まります。
特に、前歯が重なっている「叢生」や、上下の歯がきちんと当たらない「開咬」は、磨き残しの温床になりがちです。
インビザラインで歯列を整えると、歯と歯の間の清掃性が高まり、日々のケアがしやすくなります。
清掃性の向上により歯ぐきの炎症が改善しやすくなることが期待できます。口腔内の健康維持に役立つ場合があります。
つまり、歯並びを整えることは、歯ぐきを守る第一歩なのです。

正しい噛み合わせが歯の寿命を延ばす

噛み合わせが悪いと、一部の歯に強い力が集中します。
その負担が長期間続くことで、歯がすり減ったり、歯根膜や歯ぐきにダメージを与えたりすることがあります。
また、顎関節や咀嚼筋に負担がかかり、関連が示唆される症状が出ることがあります(個人差があります)。
インビザラインでは、噛み合わせを細かくシミュレーションしながら歯を動かすため、見た目だけでなく機能的なバランスを整えることができます。
歯の位置・角度・咬合力を考慮して治療が進むことで、将来的に歯を失うリスクを減らすことにもつながります。

歯周病治療と矯正の連携が大切

歯ぐきに炎症や骨の吸収がある場合、まずは歯周病治療を優先する必要があります。
歯周病が進行した状態で矯正を行うと、歯を支える骨が弱くなり、歯が動きすぎたり、歯ぐきが下がったりするリスクがあるためです。
一方で、歯周病治療後にインビザラインで歯並びを整えることで、再発予防につながることもあります。
歯ぐきの状態を安定させながら歯列を整える歯周×矯正の連携治療は、長期的な健康を見据えた理想的なアプローチといえるでしょう。

矯正後も続けたいメンテナンスの習慣

矯正治療が終わっても、健康な状態を維持するには定期的なメンテナンスが欠かせません。
歯の位置は少しずつ元の状態に戻ろうとするため、リテーナー(保定装置)の使用が大切です。
また、定期的な歯科検診やクリーニングによって、歯ぐきの炎症や噛み合わせの変化を早期にチェックすることができます。

10.よくある質問Q&A(インビザラインと歯周病・歯ぐき編)

インビザライン矯正に興味があっても、「歯ぐきが弱いけど大丈夫?」「痛みはある?」「お手入れが大変そう…」など、不安や疑問を感じる方は多いものです。
ここでは、実際によく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 歯ぐきが弱い人でもインビザラインはできますか?

歯ぐきが腫れていたり、歯周病の治療中だったりする場合は、まず歯ぐきの状態を安定させることが大切です。
歯周病が進行したまま矯正を始めると、歯を支える骨が弱くなり、歯が動きすぎてしまうリスクがあります。
ただし、歯周病治療後にインビザラインを行うことで再発予防につながるケースも多くあります。
マウスピースを外して歯みがきができるため、ワイヤー矯正に比べて口腔内を清潔に保ちやすいのも利点です。
歯科医師が歯ぐきの状態を確認しながら計画的に進めれば、歯周組織にやさしい矯正が可能です。

Q2. 矯正中の痛みはありますか?

インビザラインは、ワイヤーのように強い力で一気に歯を動かすわけではなく、1枚ごとにわずか0.25mm前後ずつ移動させていきます。
そのため、「締めつけられるような強い痛み」は少ない傾向にあります。
新しいマウスピースに交換した直後は、歯に軽い違和感や圧迫感を感じることがありますが、通常は1〜2日で慣れていく方がほとんどです。
痛みの感じ方には個人差がありますが、「動いている証拠」と捉えて前向きに続けられる程度です。

Q3. 食事中はどうすればいいの?

インビザラインの最大の特徴のひとつが、「取り外しができる」ことです。
食事の際にはマウスピースを外して、普段通りの食事を楽しむことができます。
ただし、装着したまま飲食すると、マウスピースが変形・着色したり、虫歯や歯ぐきの炎症につながることもあります。
食後は軽く歯みがきやうがいをしてから再装着するのが理想です。
外食時でも、持ち運びケースを使えば衛生的に管理できます。

Q4. インビザラインの手入れは面倒ですか?

お手入れは意外と簡単です。
マウスピースは毎日流水で洗い、柔らかい歯ブラシで軽く磨くだけでOK。
専用の洗浄剤を使うと、においや着色も防げます。
就寝前や朝の装着時に清潔な状態を保てば、口腔内トラブルを防ぎながら快適に続けられます。
また、マウスピースを装着する前に歯を磨く習慣がつくため、結果的に虫歯・歯周病予防にもつながります。

Q5. 治療後、歯並びは元に戻らない?

矯正治療後の「後戻り」を防ぐために重要なのが、リテーナー(保定装置)の使用です。
歯は動かした直後、まだ骨や歯ぐきが安定していないため、時間をかけて新しい位置に定着させる必要があります。
リテーナーを適切に使い、定期的に歯科医院でチェックを受けることで、美しい歯並びを長く維持することができます。

矯正治療は、単に歯を動かすだけではなく、「健康な歯ぐきと長く付き合うための治療」でもあります。
不安や疑問をそのままにせず、気になる点は歯科医師に相談しながら、一人ひとりに合った方法を選ぶことが大切です。

「自分の歯並びでできるのかな?」と感じたら、まずは一度、専門医にご相談ください。

 

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神奈川県伊勢原市の
見えない矯正歯科治療専門外来/マウスピース矯正(インビザライン)
『 つじむら歯科医院 伊勢原 』
住所:神奈川県伊勢原市小稲葉2204−1
TEL:0463-95-8214

 

【監修者情報】
つじむら歯科医院グループ総院長 辻村 傑 

《公式facebookアカウント》

【略歴】
1993年 神奈川歯科大学 卒業
1995年 つじむら歯科医院 開業
1997年 医療法人社団つじむら歯科医院 開設
2008年 神奈川歯科大学生体管理医学講座 薬理学分野大学院
2010年 南カリフォルニア大学卒後研修コース修了
2010年 南カリフォルニア大学客員研究員
2010年 南カリフォルニア大学アンバサダー(任命大使)
2012年 ハートフルスマイルデンタルクリニック茅ヶ崎 開業
2012年 UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校卒後研修コース修了
2013年 インディアナ大学 歯周病学インプラント科客員講師
2014年 インディアナ大学医学部解剖学 顎顔面頭蓋部臨床解剖 認定医
2017年 iDHA 国際歯科衛生士学会 世界会長就任
2020年 iACD 国際総合歯科学会 日本支部会長

【所属】
IIPD国際予防歯科学会認定医
日本抗加齢医学会認定医
日本歯科人間ドック学会認定医
日本口腔医学会認定医
セカンドオピニオン専門医
DGZI国際インプラント学会認定医
日本咀嚼学会会員
日本保存学会会員
日本全身咬合学会会員
日本口腔インプラント学会会員
国際歯周内科学研究会会員
日本口腔内科学研究会会員
日本床矯正研究会会員
神奈川矯正研究会会員
日本臨床唾液学会会員
NPO法人歯と健康を守ろう会会員
日本ヘルスケア歯科研究会会員
伊勢原市中央保育園学校歯科医
日本食育指導士
健康咀嚼指導士

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