大人になってから「今さら矯正は遅いかな…」と迷っている方は少なくありません。
しかし、装置や治療技術の進歩により、社会人になってから矯正を始める方は年々増えています。
本記事では、大人の矯正の特徴や子どもの矯正との違い、メリット・デメリット、装置の種類、歯周病がある場合の注意点、治療を成功させるためのセルフケアや治療法の選び方まで、順を追ってわかりやすく解説します。ご自身のライフスタイルに合った矯正治療を考える際の参考にしていただければ幸いです。ぜひ最後までご覧ください。
1. 大人の矯正を始める人が増えている理由

大人になってから矯正治療を始める方が増えています。
これまで「矯正は子どものうちにするもの」というイメージが一般的でしたが、装置の進化や健康意識の高まり、働き方の変化により、社会人が自分の意思で治療を選びやすくなりました。
見た目を整えるだけでなく、噛み合わせや将来の歯の寿命まで考えて治療を検討する方が増えており、大人の矯正は特別な治療ではなく身近な選択肢として広がりつつあります。
大人の矯正が広がる社会的背景
大人の矯正が増えている大きな理由は、装置の進化です。
従来の金属ワイヤーのように目立つ装置ではなく、透明で自然に見えるものや取り外しができるタイプが普及し、職場でも気にせず治療を続けられるようになりました。
オンライン会議で自分の口元を見る機会が増えたことも、治療を始めるきっかけになっています。
また、歯並びの乱れが虫歯・歯周病・噛み合わせ不良などのリスクを高めることが知られるようになり、「今からでも整えたい」と考える大人が増えています。
見た目のためだけでなく、将来の健康を守る治療として認識されてきたことで、大人の矯正は年齢に関係なく選ばれるようになりました。
見た目だけではない大人の矯正の価値
大人が矯正を検討する理由は、見た目よりも「機能面」の改善にあります。
重なった歯やねじれている歯は汚れが残りやすく、虫歯や歯周病リスクが高まりますが、矯正によって歯がきれいに並ぶとセルフケアがしやすくなり、口の中を清潔に保ちやすくなります。
さらに、噛み合わせが整うことで食事のしやすさが向上し、顎や筋肉への負担が減るため、人によっては肩こりや頭痛などの不調が和らぐと感じることもあります。
発音がしやすくなる、口元の動きが自然になるなど、仕事で話す機会が多い社会人にとっては嬉しい変化も期待できます。
矯正の価値が「見た目以上の効果」に広がっている点が、大人の矯正が増えている理由の一つです。
社会人だからこそ始めやすい大人の矯正
社会人は自己管理がしやすく、通院スケジュールを組みやすいという特徴があります。
長期間の治療でも予定を調整しやすく、経済的に自立しているため治療方法を自分で選びやすいという点も大きなメリットです。
また、透明で目立ちにくい装置が増えたことで、仕事中の見た目を気にせず治療を続けられるようになりました。
取り外しができる装置なら、食事や歯みがきも普段通りで衛生的に治療できます。
矯正をきっかけに生活習慣が整い、歯みがきや食生活への意識が高まるケースも多く、忙しい大人にとって健康管理の一環として取り入れやすい治療になっています。
2. 大人の矯正と子どもの矯正は何が違う?

大人の矯正は「もう遅いのでは?」と思われることがありますが、実際には成人でも問題なく矯正治療を進められます。
むしろ、骨格の成長が止まっている分、治療計画が立てやすいというメリットもあります。
ただし、子どもの矯正とは目的や動かし方が異なり、大人ならではの注意点も存在します。
本章では、成人矯正の特徴や子どもの矯正との違いを3つの視点からわかりやすく解説します。
骨の成長が止まった大人と成長期の子どもの違い
子どもの矯正は、成長を利用して骨格のバランスを整えることができます。
顎の成長の向きや幅を早い段階で整えることで、将来的に歯が並ぶスペースを確保しやすくなるのが特徴です。
一方、大人はすでに骨の成長が止まっているため、骨格自体を大きく変えることはできません。
その分、歯を動かす力の調整や治療計画がより重要になります。
治療は十分可能ですが、子どもの矯正とは目的が異なり、「骨格を広げる」のではなく「歯を正確な位置へ移動させる」ことが中心です。
また、長年の噛み合わせのクセや歯ぐきの状態を考慮して治療を進める必要があり、精密な診断が求められます。
歯ぐき・骨の状態を整えながら進める必要がある
大人の矯正では、歯周病や歯ぐきの炎症があると治療を進められません。
歯を動かすには歯ぐきと骨の健康が欠かせず、子どもよりも歯周病リスクが高い大人は、事前のチェックがより重要になります。
歯周病がある状態で矯正をすると、歯を支えるあごの骨が弱くなり、動かす力に耐えられなくなることがあるためです。
そのため成人矯正では、治療前にクリーニングや歯周治療を行い、口腔環境を整えてからスタートするケースが多くあります。
また、治療中は歯磨きの丁寧さが仕上がりに直結し、セルフケアの質が治療の進み方を左右します。
大人の矯正は「動かすだけでなく、守りながら進める」点が特徴です。
治療計画がより正確で、仕上がりをイメージしやすい
大人の場合、顎の成長が安定しているため治療計画が立てやすく、シミュレーション通りに進みやすいというメリットがあります。
子どもは成長によって噛み合わせや骨格が変化するため、矯正中に予定を修正することもありますが、大人は安定しているぶん仕上がりの予測がしやすいのです。
さらに、立体的な(3D)シミュレーションで歯の動きを事前に確認できる装置も増え、治療前から仕上がりをイメージしやすくなりました。
社会人にとって「どれくらいの期間でどのように変わるのか」を理解できる点は大きな安心材料となり、治療を始めやすくする要因にもなっています。
計画性を重視したい大人の矯正にとって、この精密さは大きなメリットといえます。
3. 大人が気づきにくい歯並びと歯周病・虫歯の関係

大人になると、子どものころとは違い歯並びを「ただの見た目」だけで判断しがちです。
しかし実際には、歯並びの乱れは虫歯や歯周病のリスクを高め、将来的に歯を失う原因にもつながります。
とくに社会人は忙しさからセルフケアが不十分になりやすく、気づかないうちにトラブルが進行することもあります。
本章では、大人特有の歯並びの問題と、それが健康にどう影響するのかを3つの視点から解説します。
歯が重なる部分は汚れが溜まりやすく虫歯の温床になりやすい
歯が重なっていたり、ねじれていたりすると歯ブラシが届きにくく、磨き残しが発生しやすくなります。
とくに歯と歯の間に角度がついている場合、歯垢が蓄積しやすく、虫歯が繰り返し起こる原因になります。
大人は忙しさから短時間で歯みがきを済ませてしまうことも多く、完全に落としきれない汚れが残ると、気づかないうちに初期虫歯が広がるリスクが高まります。
さらに、治療済みの詰め物や被せ物が多い場合、そのすき間にも汚れが入り込みやすく、歯並びの乱れがあるほど清掃の難しさが増してしまいます。
矯正で歯並びを整えることで、毎日のケアがしやすくなり、虫歯予防の効果が高まりやすくなります。
歯並びの乱れは歯周病を悪化させる要因になる
大人に多いトラブルが歯周病です。
歯周病は歯ぐきの炎症だけでなく、歯を支える骨が溶ける病気で、歯並びが悪いほど汚れが残りやすく炎症が進行しやすくなります。
とくに歯が前後にずれている部分は歯ブラシが入りにくく、プラークや歯石が蓄積しやすい箇所です。
また、噛み合わせが偏っていると特定の歯に強い負荷がかかり、その歯だけ骨が減りやすくなることがあります。
40〜50代で急に歯周病が進行する背景には、長年の噛み合わせの負担が積み重なっているケースも少なくありません。
矯正治療によって噛み合わせを整えることで、歯周病の進行を抑える一助となり、歯を長く守りやすい環境づくりに役立つ場合があります。
噛み合わせのズレは全身に影響し、日常の不調を生むこともある
歯並びの乱れは口の中だけでなく、全身のバランスにも影響します。
噛み合わせが悪いと、食事の際にどちらか一方の歯ばかり使うクセがつき、顎の筋肉の使い方に偏りが生まれます。
これが慢性的な顎の疲れ、肩こり、頭痛につながることがあります。
噛み合わせのズレは正しい発音を妨げることもあり、人前で話す機会が多い社会人にとっては大きなストレス要因にもなり得ます。
矯正によって噛み合わせが整うと、顎や頭部の筋肉がバランスよく使われるようになり、日常の不調が軽減されるケースもあります。
健康面から見ても、噛み合わせの改善は非常に重要なポイントです。
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4. 大人の矯正で知っておきたいメリット

大人になってから矯正を始めると、「痛そう」「時間がかかりそう」という不安を抱きやすい一方で、実は大人だからこそ実感しやすいメリットが多くあります。
見た目が整うことでの自信だけでなく、健康面や生活の質の向上、仕事の場面での印象改善など、日常のさまざまな場面に良い影響を与えるのが特徴です。
本章では、大人の矯正がもたらす具体的なメリットを3つの視点から紹介します。
見た目の変化が自信につながり、コミュニケーションがしやすくなる
大人の矯正でまず実感しやすいのは、口元の印象が明るくなることです。
歯並びが整うと笑顔が自然になり、人とのコミュニケーションがスムーズになります。
仕事や日常生活で人と話す機会が多い大人にとって、口元の印象は思っている以上に大きな要素です。
これまで口元を気にして笑顔がぎこちなくなったり、写真で口を閉じるクセがあったりした方も、矯正が進むにつれて自然な表情を取り戻すことが多くあります。
また、口元に自信が持てることで、人前に立つ場面やオンライン会議でも堂々と話しやすくなり、仕事のパフォーマンスに良い影響が出るケースも少なくありません。
虫歯・歯周病のリスクが減り、将来の歯を守りやすくなる
歯並びが整うと、歯みがきが格段にしやすくなります。
重なっている部分や凹凸がある部分は汚れが残りやすく、虫歯や歯周病の原因になりますが、矯正で歯がまっすぐに並ぶことで歯ブラシが届きやすくなり、磨き残しが大幅に減ります。
大人はすでに治療済みの歯が多く、詰め物や被せ物のすき間に汚れが溜まりやすい傾向がありますが、矯正をすることでそのリスクも軽減できます。
また、噛み合わせが整うと特定の歯に過度な負担がかからなくなり、歯ぐきや骨にかかるストレスが減って歯を長く守りやすくなります。
見た目以上に、口の中の健康を保つという意味で大人の矯正は大きなメリットがあります。
噛みやすさが改善し、食事や日常の快適さが向上する
噛み合わせの乱れは、「硬いものが噛みにくい」「片方だけで噛むクセがある」など、日常の小さな不快感を生みやすいものです。
大人の矯正では、歯並びだけでなく噛み合わせも整うため、食事のしやすさが大きく改善されます。
両側でバランスよく噛めるようになると顎の負担が減り、食事の時間そのものが快適になります。
また、よく噛めることで消化を助け、体の健康にも良い影響が期待できる場合があります。
さらに、噛み合わせの改善によって顎や周辺の筋肉のバランスが整い、肩こりや頭痛が軽くなるケースもあります。
毎日の生活が過ごしやすくなる点は、大人の矯正ならではの大きな利点です。
5. 大人の矯正で知っておきたいデメリットと注意点

大人の矯正には多くのメリットがありますが、治療を始める前に知っておきたい注意点もあります。装置による違和感や治療期間の長さ、歯ぐきや骨の状態など、大人だからこそ気をつけるべきポイントがあります。適切に理解しておくことで、治療中のストレスを軽減し、より満足度の高い矯正治療につながります。本章では、大人が特に注意したい3つの視点からデメリットと対策を解説します。
装置による違和感や痛みは多少あるが、多くは慣れることで軽減する
大人の矯正では、装置をつけた直後や調整の直後に痛みや違和感が出ることがあります。これは歯が動く力が加わることで起こる自然な反応です。子どもより大人のほうが骨が硬いため、動き始めの痛みが強く感じられる場合もあります。
しかし、多くの方が数日で慣れ、日常生活に支障はなくなります。マウスピース型の装置であれば取り外しができるため、痛みや不快感が出た際に対処しやすい利点もあります。また、治療初期に柔らかい食事を選ぶなど、無理のない対応をすることで違和感は徐々に軽減されます。
もし痛みが長く続く場合は装置の調整が必要なこともあるため、早めに歯科医師に相談することが大切です。
治療期間が長くなることがあり、通院ペースを守る必要がある
大人の矯正は、歯の動きが子どもよりゆっくりになるため、治療期間が長くなることがあります。一般的に1年半〜2年ほどかかることが多く、症例によってはさらに時間が必要なケースもあります。
忙しい社会人にとっては通院が負担になることもありますが、通院ペースが乱れると治療の進みが遅れる可能性があります。治療期間を短くするためには、指示された通りに装置を使うことが非常に重要です。
マウスピース矯正では装着時間の管理が直接仕上がりに影響するため、自己管理が必要になります。治療前にライフスタイルに合った矯正方法を選ぶことが、無理なく続けられる治療につながります。
歯ぐきや骨の状態によっては事前の治療が必要になることもある
大人の矯正で特に注意したいのが、歯ぐきや骨の状態です。歯周病があると歯を支えるあごの骨が弱くなり、矯正の力に耐えられない場合があります。そのため、治療を安全に進めるには、歯周病の検査やクリーニングを行い、口腔内を整えてから矯正をスタートする必要があります。
さらに、歯周病リスクが高い方は治療中も丁寧なセルフケアが求められます。これは決してデメリットではなく、治療成功に欠かせない大切なステップです。
大人の矯正は、歯を動かすだけでなく「歯を守りながら進める治療」であるため、子どもの矯正以上に精密な診断と管理が重要になります。
6. 大人の矯正で選べる装置の種類と特徴

大人の矯正では、装置選びが治療の続けやすさと満足度を大きく左右します。見た目への配慮、仕事との両立、衛生面、通院頻度など、社会人ならではのニーズに合う装置を選ぶことが重要です。近年は目立ちにくい・取り外せる・清掃しやすいといった選択肢が増え、大人のライフスタイルに合わせた治療が可能になっています。本章では、大人が選びやすい矯正装置を3つの視点から解説します。
ワイヤー矯正(表側)は幅広い症例に対応しやすく、歯をしっかり動かせる
ワイヤー矯正は長い歴史があり、幅広い歯並びに対応できる信頼性の高い治療方法です。歯の表面にブラケットという装置をつけ、ワイヤーで歯を動かすため、細かい調整や大きな移動が必要な症例にも適しています。
治療の自由度が高い一方で、見た目の面では装置が目立ちやすいデメリットがあります。ただし近年は透明のブラケットや白いワイヤーも増えており、従来よりも見た目に配慮した装置が選べるようになっています。
仕事柄、人と接する機会が多い方でも工夫次第で気になりにくい装置になりつつあります。食事や歯みがきには工夫が必要ですが、対応できる範囲が広いのは大きな魅力です。
裏側矯正は見えにくさを重視する人に適した選択肢
裏側矯正(リンガル矯正)は、歯の裏側に装置をつける方法のため、周囲に気づかれずに矯正を進めたい方に適した治療方法です。職業上、見た目を気にせず治療したい社会人に人気があります。
ワイヤー矯正と同様に幅広い歯並びに対応できますが、装置が舌側にあるため慣れるまで発音しにくかったり、舌に当たる違和感が出たりする場合があります。
また、技術が必要な治療であるため、対応している歯科医院が限られることもあります。とはいえ、「見えにくい」という最大のメリットは大きく、治療中の見た目を最優先したい方には適した選択肢といえます。
マウスピース矯正は取り外し可能で生活に取り入れやすい
マウスピース矯正は透明で目立ちにくく、取り外しができるため、食事や歯みがきを普段どおり行える点が大きな特徴です。職場での見た目が気になりにくく、衛生的に治療を続けられるため、忙しい社会人にも馴染みやすい治療方法です。
歯を段階的に動かすために専用のアライナーを交換しながら進める仕組みで、立体的な(3D)シミュレーションを使う場合は、治療の過程や仕上がりのイメージも共有しやすい利点があります。
ただし、装着時間を守らないと予定通りに進まないため、自己管理が必要です。生活に合わせて装置を選びたい大人にとって、マウスピース矯正は非常に相性の良い治療方法です。
7. 歯周病がある場合の大人の矯正はどう進める?

大人の矯正では、歯周病の有無が治療の進行を大きく左右します。子どもと違い、大人は歯ぐきの炎症や骨の減少が起こりやすく、「矯正を始めたいけれど歯周病が心配」という方も少なくありません。実際、状態によっては歯周病治療と管理を行うことで、矯正が可能になる場合もあります。ただし、歯を動かせる条件や進め方には注意が必要です。本章では、歯周病がある大人が矯正を進める際に知っておきたい3つのポイントを解説します。
まずは歯周病の状態を正確に把握し、必要に応じて治療を優先する
歯周病があると、歯を支える骨が弱っていることがあります。その状態で矯正の力をかけると、歯が動きすぎたり揺れが強くなるリスクが生じます。
そのため、歯周病が疑われる場合は、まず歯ぐきの検査やレントゲン撮影で現状を正確に把握します。軽度であればクリーニングや歯石除去で改善し、改善後に矯正を始められることがほとんどです。
中等度〜重度の場合は歯周治療を優先し、炎症が落ち着き骨の状態が安定してから矯正に移ります。「歯周病がある=矯正できない」のではなく、まず治療を行ってから矯正の可否を判断することが重要です。
矯正中は歯ぐきに負担がかかりやすいため、セルフケアの質が重要になる
矯正中は歯が動くため、歯ぐきへの負担が増えます。大人の矯正ではとくにセルフケアの質が治療結果を左右します。
装置のまわりには汚れがつきやすく、歯周病の再発リスクが高まるため、いつも以上に丁寧な歯磨きやフロス、歯間ブラシを習慣化する必要があります。
マウスピース矯正であれば取り外しができるため、清掃性が高いのがメリットです。一方、ワイヤー矯正は清掃に工夫が必要ですが、正しいケアを続ければ問題なく治療を進められます。
また、歯科医院での定期的なクリーニングや歯周ポケットの確認も重要で、治療中の安定した結果につながります。大人の矯正では「動かす」だけでなく「守りながら進める」ことが特に大切です。
歯周病の既往がある方ほど、噛み合わせの改善が大きなメリットになる
歯周病は歯ぐきだけでなく、噛み合わせによる負担とも密接に関係しています。
歯が傾いている、ねじれている、位置がずれているなど噛み合わせに偏りがあると、特定の歯に過度な力がかかり、それが歯周病悪化の一因になることがあります。
矯正で噛み合わせが整うと、歯にかかる力が均等になり、歯ぐきへの負担が軽減されるため、歯周病の進行を抑えやすくなる場合があります。
すでに歯周病治療を経験している方ほど「噛み合わせが整うことの大切さ」を実感されるケースが多く、大人の矯正では長期的な歯の健康を維持するうえでも噛み合わせの改善が大きな意味を持ちます。
8. 大人の矯正を成功させるために必要なセルフケア

大人の矯正では、日々のセルフケアが治療結果を大きく左右します。子どもと違い、大人は歯周病リスクが高く、歯ぐきや骨の状態が治療の進行に直結します。さらに、仕事や家庭で忙しい中でも丁寧なケアを続けることが重要になります。矯正治療をスムーズに進めるためには、毎日の清掃や生活習慣を「治療の一部」として取り入れることが不可欠です。本章では、大人の矯正を成功させるためのセルフケアについて、重要なポイントを3つに分けて解説します。
装置周りの汚れを残さないための歯みがき習慣を身につける
矯正装置が付いていると、わずかな汚れもたまりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。特にワイヤー矯正の場合、ブラケットやワイヤーの周囲に汚れが絡まりやすいため、通常より時間をかけて丁寧に磨く必要があります。
歯と歯ぐきの境目、装置のまわり、歯の裏側など、磨き残しが出やすい場所を意識し、歯ブラシの角度を変えながら細かく磨くことが大切です。電動歯ブラシを併用すると効率良く清掃できる場合もあります。
一方、マウスピース矯正は取り外して磨けるため清掃性が高い点がメリットです。ただし、マウスピース自体の洗浄が必要で、ぬるま湯での洗浄や専用クリーナーの使用によって細菌やニオイを防ぐことができます。
どの矯正方法でも、「普段より丁寧に」「時間をかけて磨く」という姿勢が治療を成功させるうえで非常に重要です。
フロスや歯間ブラシを使った細部のケアで治療効果を最大化する
歯ブラシだけでは取り除けない汚れは必ず歯間に残り、これが虫歯や歯周病の原因になります。成人の場合、詰め物や被せ物が多いと汚れがたまりやすく、歯間ケアの重要性がさらに高まります。
毎日フロスや歯間ブラシを使用し、細部まで清掃することは矯正治療中の必須習慣です。歯が動いて歯間の大きさが変化するため、サイズを調整しながら使い分けることも大切です。
ワイヤー矯正ではフロスが通しにくくなるため、専用スレッダーや糸ようじを使用すると効率よくケアできます。手間は増えますが、この細やかなケアが治療後の美しい仕上がりと健康を守る大きな鍵になります。
生活習慣にも気を配り、歯と歯ぐきの健康を守る意識を持つ
大人の矯正では、生活習慣が治療の進行や結果に大きく影響します。間食が多いと虫歯リスクが上がるため、食事回数を調整したり、歯にくっつきやすい食品を控えるなどの工夫が必要です。
ストレスが多い生活では噛みしめや歯ぎしりが起こりやすく、矯正中の歯に余計な力が加わることがあります。必要に応じてナイトガードを使用することで、歯を守ることができます。
また、喫煙は歯ぐきの血流を悪化させ、治療の遅れや歯周病悪化の原因になります。禁煙を目指すことで、矯正治療の成功率を大きく高めることができます。
矯正治療は「歯を動かす期間」であると同時に「生活を整える期間」でもあるため、毎日の小さな習慣が最終的な仕上がりを左右します。健康な歯ぐきと良い噛み合わせを維持するためにも、生活全体で歯を守る意識を持ち続けることが重要です。
9. 大人の矯正でよくある疑問と不安

大人になってから矯正を始めると、痛みや治療期間、仕事との両立など、子どもの矯正とは異なる不安を抱く方が多くいます。社会人は生活のリズムが確立されている分、「本当に続けられるのだろうか」「治療中の見た目は大丈夫?」といった疑問が生まれやすいものです。本章では、大人が矯正治療で抱きがちな代表的な不安を3つ取り上げ、それぞれのポイントをわかりやすく解説します。
矯正は痛い?どれくらい痛むのか知りたい
大人の矯正で最も多いのが「痛み」に関する不安です。歯が動き始める数日間は、違和感や軽い痛みを感じることがあります。これは歯のまわりの骨が作り変わるときに生じる自然な反応で、多くの人が数日〜1週間ほどで慣れていきます。
痛みの強さには個人差がありますが、現在の矯正装置は過度な力をかけず、弱い力でゆっくり動かす設計になっているため、昔の矯正と比べても痛みは軽減されています。また、マウスピース矯正ではワイヤー矯正より「痛みが少ないと感じる方が多い」とされますが、感じ方にはどうしても個人差があります。
強い痛みが長期間続くケースはまれで、治療が進むにつれて気にならなくなることがほとんどです。心配な場合は事前に相談し、無理のない治療計画を立てることで安心して治療を進められます。
治療中の見た目や仕事への影響は大きい?
大人の場合、治療中の見た目を気にする方がとても多くいます。しかし最近では、見た目への配慮がされた矯正装置が増え、治療中だと気づかれにくくなっています。
透明のブラケットや白いワイヤーを使用した表側矯正、歯の裏側につける裏側矯正、さらに透明で目立ちにくいマウスピース矯正など、生活や職場環境に合わせて選べる装置が大幅に増えています。特にマウスピース矯正は、会話や笑顔でも気づかれにくく、取り外しも可能なため、食事や会議の前に一時的に外すこともできます。
このように見た目の不安が減ることで、仕事に支障が出ることはほとんどなく、治療中も自然に過ごしやすい環境が整いつつあります。
本当に続けられる?治療期間と生活の両立が心配
矯正治療は1〜2年ほど続くため、「忙しい中で本当に続けられるか」が大人にとって大きな不安要素になります。しかし、大人の矯正は、自分の意思で「治したい」と思って始める方が多く、目標が明確な分モチベーションを保ちやすいのが特徴です。
また、マウスピース矯正は通院頻度が比較的少なく、仕事が忙しい社会人でも続けやすいというメリットがあります。装着時間を守り、指示どおり進めることで計画的に治療を進められます。
さらに、治療の始めに立体的なシミュレーションで歯の動きを確認できる方法もあり、「あとどれくらいで終わるのか」が明確に見えると、ゴールがイメージしやすく、継続しやすくなります。
大人の矯正は、生活の中で無理なく続けられるよう設計することで十分に両立可能です。自分に合った治療方法を選び、計画的に進めることで、負担を最小限にしながら理想の歯並びを目指すことができます。
10. 大人の矯正を始めるなら、自分に合った治療方法を選ぶことが大切

大人の矯正は、装置の選び方によって治療の続けやすさや仕上がりの満足度が大きく変わります。仕事や家庭の予定、生活習慣、見た目の優先度などは人によって異なるため、「自分にとって無理なく続けられる方法」を選ぶことが成功の鍵になります。
生活リズムと通院ペースが合っているかを見極める
大人の矯正では、治療期間や通院頻度を生活リズムに無理なく組み込めるかどうかが重要な判断ポイントになります。ワイヤー矯正は細かい調整が必要なため通院頻度が比較的多く、仕事や家庭の予定に合わせてスケジュールを調整する必要があります。
一方、マウスピース矯正は通院間隔を長めに設定できることが多く、忙しい社会人でも続けやすい治療方法です。仕事が不規則な方や子育て中の方など、生活の変動が大きい場合は「通院しやすい方法」を選ぶことで長続きしやすくなります。継続が治療成功の鍵となるため、自分の生活パターンに合った治療方法を選ぶことが重要です。
見た目のストレスなく治療を続けられるかを考える
治療中の見た目は、大人の矯正で特に気になるポイントです。表側ワイヤー矯正は目立ちやすいため、見た目の変化に抵抗を感じる方も少なくありません。裏側矯正は見えにくいというメリットがありますが、発音のしにくさや舌への違和感など慣れるまでの時間が必要なケースがあります。
その点、透明で自然な見た目のマウスピース矯正は、人前に立つ機会が多い方や仕事で話すことが多い社会人にも取り入れやすく、治療中でもほとんど見た目が気になりません。「日常生活の見た目を変えたくない」「周囲に気づかれずに治したい」という方には大きなメリットとなり、治療のストレス軽減につながります。
清潔に保ちやすく、長期的に健康を守れる方法かを検討する
大人の矯正では、歯周病リスクの管理がとても重要です。ワイヤー矯正は装置まわりに汚れが溜まりやすく、丁寧なブラッシングが必要になります。忙しくてケアの時間が取りにくい方にとっては、負担が大きくなることがあります。
それに対して、マウスピース矯正は取り外しができ、普段どおりに歯みがきができるため衛生面を保ちながら治療を続けやすいのが大きな利点です。大人の場合、歯を「動かすこと」と同じくらい「守ること」が治療成功の鍵になるため、清潔を保ちやすい装置を選ぶことは非常に合理的な判断といえます。
インビザラインという選択肢が大人の矯正に向いている理由
こうした視点を踏まえると、透明で目立たず、取り外しができて衛生的に保てるマウスピース矯正(インビザライン)は、大人の矯正と相性が良い治療方法の一つといえます。自分の生活スタイルに合わせて続けやすく、仕事の場面でも気にせず過ごせるため、矯正治療が「特別なこと」ではなく、普段の生活に自然と溶け込む存在になります。
大人だからこそ、「続けやすい方法」を選ぶことが治療成功への近道です。自分に合った矯正方法を選び、無理なく続けられる環境を整えながら、理想の歯並びを目指していくことが大切です。
インビザラインについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
神奈川県伊勢原市の
見えない矯正歯科治療専門外来/マウスピース矯正(インビザライン)
『 つじむら歯科医院 伊勢原 』
住所:神奈川県伊勢原市小稲葉2204−1
TEL:0463-95-8214
【監修者情報】
つじむら歯科医院グループ総院長 辻村 傑
【略歴】
1993年 神奈川歯科大学 卒業
1995年 つじむら歯科医院 開業
1997年 医療法人社団つじむら歯科医院 開設
2008年 神奈川歯科大学生体管理医学講座 薬理学分野大学院
2010年 南カリフォルニア大学卒後研修コース修了
2010年 南カリフォルニア大学客員研究員
2010年 南カリフォルニア大学アンバサダー(任命大使)
2012年 ハートフルスマイルデンタルクリニック茅ヶ崎 開業
2012年 UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校卒後研修コース修了
2013年 インディアナ大学 歯周病学インプラント科客員講師
2014年 インディアナ大学医学部解剖学 顎顔面頭蓋部臨床解剖 認定医
2017年 iDHA 国際歯科衛生士学会 世界会長就任
2020年 iACD 国際総合歯科学会 日本支部会長
【所属】
IIPD国際予防歯科学会認定医
日本抗加齢医学会認定医
日本歯科人間ドック学会認定医
日本口腔医学会認定医
セカンドオピニオン専門医
DGZI国際インプラント学会認定医
日本咀嚼学会会員
日本保存学会会員
日本全身咬合学会会員
日本口腔インプラント学会会員
国際歯周内科学研究会会員
日本口腔内科学研究会会員
日本床矯正研究会会員
神奈川矯正研究会会員
日本臨床唾液学会会員
NPO法人歯と健康を守ろう会会員
日本ヘルスケア歯科研究会会員
伊勢原市中央保育園学校歯科医
日本食育指導士
健康咀嚼指導士












