コラム

2025.11.28

子どもの矯正はいつから?年齢別に見る治療時期と方法を解説

子どもの矯正はいつから?年齢別に見る治療時期と方法を解説

子どもの歯並びについて調べていると、「いつ頃から矯正を始めるべき?」「今は様子を見ていても大丈夫?」といった不安や疑問が出てきます。実際には、同じ年齢でも歯の生え替わりやあごの成長のスピードには個人差があり、「何歳だから必ず矯正が必要」という一律の正解はありません。
本記事では、3〜6歳・6〜9歳・9〜12歳・12〜15歳といった成長のステージごとに、どのような変化が起こり、どんな矯正治療や考え方があるのかをわかりやすく整理します。お子さまの歯並びが気になり始めた方は、ぜひ最後までご覧ください。

1. 子どもの矯正を考える第一歩 ― 成長期の歯とあごの「今」を知る

子どもの歯並びは、成長に合わせて大きく変化します。乳歯が揃って安心したと思ったら前歯が抜け始め、生え替わりの途中では歯が重なったり、すき間ができたりと、一見すると不安になるような状態に見えることもあります。こうした変化は自然なものも多い一方で、その裏に早めに気づきたいサインが隠れていることもあります。まずは成長期にどんな変化が起きるのかを知ることで、子どもの歯並びを適切に見守る第一歩になります。

 

成長とともに変化する歯列の特徴

乳歯だけの時期には、歯と歯の間にすき間がある状態が一般的です。これは後から生えてくる永久歯が大きいために必要なスペースで、健康な成長の一部です。しかし、6歳ごろに前歯が生え替わり始めると、歯が斜めに生えてきたり、重なって見えたりと、見た目の変化が一気に起こります。こうした変化は、あごの成長と永久歯の大きさや生える角度のバランスがまだ整っていないために生じるものです。自然に整うケースも多いですが、中には成長だけでは改善が難しい歯並びのサインが隠れていることもあります。

 

子どもの矯正が必要になる主な理由

歯並びの問題は見た目だけではなく、健康や成長にも関わります。歯が重なっているとブラッシングが難しくなり、むし歯や歯肉炎のリスクが高まります。噛み合わせが悪いと、食べ物をしっかり噛めず、あごや筋肉の発達に影響することがあります。さらに、口が開きやすい、口呼吸が続く、発音しにくい音があるといった習慣も、歯並びや噛み合わせが背景に関係していることがあります。こうした問題は放っておくと改善が難しくなることがあるため、子どもの成長に合わせて早めに気づくことが大切です。

 

年齢だけでは判断しにくい「チェックすべきサイン」

矯正を始めるタイミングは何歳からと決められるものではありません。成長段階によって注意したいサインが変わるため、日常の中で小さな変化を見逃さないことが重要です。たとえば、前歯のガタつきが極端に強い、受け口や出っ歯が続いている、奥歯がずれて噛み合っている、口が閉じにくい、口呼吸が習慣化している──こうした状態は一度確認したいポイントです。特にあごの骨格に関わる問題は、成長とともに広がることもあるため、早期発見が将来の歯並びを守ることにつながります。

2. 3〜6歳:乳歯列期の矯正が向いているケースとは

3〜6歳は、乳歯がすべて揃い、あごの発育や口周りの習慣が大きく形づくられる大切な時期です。この時期の歯並びは「乳歯だから気にしなくていい」と思われがちですが、実は将来の噛み合わせに関わる重要な変化が見られます。とくに指しゃぶりや口呼吸などの習慣は、歯並びやあごの成長に影響することがあるため、早めに気づくことが将来の負担を減らすことにつながります。

 

乳歯でも矯正が必要になる理由

乳歯は「どうせ抜けるもの」と考えられがちですが、実際には永久歯が正しい位置に生えるための道しるべとして大きな役割を果たしています。乳歯が虫歯で早く抜けたり、歯列の幅が狭かったりすると、永久歯が生えるスペースが足りなくなり、将来のガタつきにつながることがあります。また、乳歯の段階で上下の噛み合わせがずれていると、その形のままクセづいてしまい、成長後に改善が難しくなるケースもあります。乳歯の時期だからこそ、あごの成長をコントロールしやすく、将来の歯並びを整える土台づくりができるのです。

 

指しゃぶり・口呼吸などの癖が与える影響

3〜6歳は生活習慣が身につきやすい時期で、歯並びにも大きく影響します。特に気をつけたいのが、指しゃぶり・口呼吸・舌を前に押し出すクセです。これらの習慣は、前歯が出てしまったり、開咬(前歯が噛み合わず、上下の前歯の間にすき間があく状態)をつくったりする原因になり、あごの成長方向にも影響を与えることがあります。
指しゃぶりが長く続くと前歯を押す力がかかり、歯の傾きやすき間の形成につながることがあります。口呼吸は口周りの筋力の低下を招き、歯列が狭くなる、顔立ちの成長に影響するといった変化にも関係します。生活習慣を整えることが、矯正治療の必要性を減らしたり、将来の噛み合わせを守ったりする大切なポイントになります。

 

乳歯期に行われる早期治療の考え方

この時期に行われる矯正は、歯そのものを大きく動かすというよりも、土台となるあごの成長を整えることを目的とすることが多くあります。あごの幅を広げたり、正しい噛み合わせの位置に誘導したりすることで、永久歯が生えるスペースをつくり、将来の歯並びが整いやすい環境をつくります。
乳歯期の治療は大がかりなものではなく、取り外せる装置を使ったり、毎日の習慣改善を組み合わせたりすることが多いため、子どもへの負担は比較的少ない傾向があります。また、成長を利用できるこの時期だからこそ、少ない力で大きな効果を期待できる場合があります。
早期治療がすべての子に必要というわけではありませんが、この時期にしかできないアプローチがあることを知っておくと、成長を見守る上で役立ちます。

3. 6〜9歳:前歯が生え替わる時期の要チェックポイント

6〜9歳は、乳歯と永久歯がいっしょに生えている時期で、混合歯列期と呼ばれます。前歯や6歳臼歯が生え始め、口の中のバランスが大きく変化します。この時期は「とりあえず様子を見よう」と判断されやすい一方で、将来の歯並びや噛み合わせに影響するサインが現れやすいタイミングでもあります。見た目の変化が大きいため不安になりがちですが、成長の特徴を知っておくことで必要以上に心配せず、適切に見守ることができます。

 

前歯のガタつきやすき間が起こりやすい理由

生え替わりが始まると、前歯が大きく揺れたり、生えてきた永久歯が斜めに見えたり、すき間があいたりと、急な変化に驚くことがあります。しかし、永久歯は乳歯よりも大きいため、あごの成長と歯のサイズのバランスが合うまで不安定な状態が続くのは自然なことです。
特にこの時期は、あごが成長途中のため、スペース不足で歯が重なって見えることもあります。全てが矯正必須というわけではありませんが、ガタつきが強すぎる、上下の前歯が噛み合わないなどの状態が続く場合は、早めに確認することで後の治療負担を減らせることがあります。

 

生え変わり期に気づきやすい噛み合わせのズレ

6〜9歳は噛み合わせの変化が現れやすい時期です。たとえば、受け口(反対咬合)が続く、前歯が全く噛み合わない開咬の状態、横の歯がずれて噛んでいるクロスバイト(上下の歯が交差して横にずれて噛んでいる状態)などは、この時期に気づきやすい代表的なサインです。
噛み合わせのズレは、成長によって自然に改善することもありますが、あごの骨のバランスそのものに問題がある場合は、放置するとズレが大きくなることがあります。とくに6歳ごろに一番奥に生えてくる「6歳臼歯」(最初の永久歯)は、将来の噛み合わせの基準となる重要な歯のため、この歯の位置や接触の仕方を適切に見極めることが重要です。噛み合わせに小さな違和感があるだけでも、早めに状況を知っておく価値があります。

 

この時期に行われる矯正治療の基本

生え替わりが進む6〜9歳では、あごの成長と永久歯の並び方を整える治療が行われることが多くあります。具体的には、あごの幅を広げて永久歯のスペースを確保したり、正しい噛み合わせに誘導するための装置を使ったりする方法があります。これらは成長の力を利用するため、少ない負担で効果が出やすいのが特徴です。
また、歯そのものを無理に動かすのではなく「将来の歯並びが整いやすくなる土台づくり」を意識した治療が中心です。必要に応じて、生活習慣の見直しや口周りの筋力トレーニングを併用することもあり、歯・あご・習慣の3つを総合的に見ながら進めていきます。
早期治療がすべての子に必要というわけではありませんが、この時期の変化を正しく理解することで、治療が必要なケースと経過観察でよいケースを見極めやすくなります。

4. 9〜12歳:あごの成長が活発な時期にできる矯正治療

9〜12歳は、上下のあごが大きく成長し、顔つきや噛み合わせの土台が形づくられる重要な時期です。永久歯が次々に生え揃い、上下の歯が本格的に噛み合い始めることで、歯並びの問題がより明確に見えるようになります。一方、この時期は成長の力を最大限活かせる最後のタイミングでもあり、歯並びや骨格のバランスを整えるうえで効果的な治療を行いやすい段階です。変化が目で見てわかりやすい時期だからこそ、適切なサポートが将来の噛み合わせを大きく左右します。

 

上下のあごのバランスが整いやすい時期

この時期は、あごの骨が成長するスピードが速く、噛み合わせの土台が大きく変わるタイミングです。特に上下のあごの前後・左右のバランスが整いやすく、成長の方向を適切に誘導することで、将来の噛み合わせが安定しやすくなります。
たとえば、上あごが狭い場合には呼吸のしやすさや歯列の広がりに影響することがあり、成長期の今なら幅を広げる治療が比較的スムーズに行えます。また、受け口や出っ歯のように骨格的な問題がある場合も、この時期の成長力によって改善できる幅が大きく、将来の負担を軽減できることがあります。骨格の成長に関わる問題は、成長が止まると改善が難しくなるため、この時期の見極めがとても重要です。

 

この時期に見つかる歯並び・噛み合わせの問題

9〜12歳になると、多くの永久歯が生え揃い始めるため、歯並びの問題がはっきり見えるようになります。前歯のガタつきが強い、出っ歯が目立つ、受け口の傾向が続く、奥歯がずれて噛み合っているなど、これまで漠然としていた違和感が具体的な形となって表れます。
特にこの時期に注意したいのは、上下の歯の接触状態です。噛む位置がずれていると、左右の筋肉が偏って使われ、顔のバランスや発音、食べ方にも影響が出ることがあります。また、歯と歯の間に食べ物がよく挟まる、奥歯で噛みにくいといった小さなサインも見逃せません。永久歯の位置は一度固まると動かしにくいため、この段階で問題を把握することが後の治療効率に大きく関わります。

 

成長を利用した治療ができる最後のタイミング

9〜12歳は、あごの成長を活かせるほぼ最後の時期と言われています。このタイミングで行う矯正治療は、歯を無理に動かすのではなく、あごの骨格や噛み合わせの方向を正しい位置へ導くことを目的としています。
具体的には、上あごや下あごの成長をコントロールする装置、歯列の幅を整えて将来の歯並びを安定させる治療などが用いられます。成長が止まってしまうと骨格的な改善が難しくなり、大人になってからの治療では時間や負担が増えることがあります。
この時期に適切な治療を行うことで、歯並びだけでなく噛み合わせの土台が整い、将来のむし歯や歯周病のリスクを減らす効果も期待できます。まさに「成長を味方にできる最後のチャンス」といえる段階です。

5. 12〜15歳:永久歯列が揃う時期の本格矯正

12〜15歳は、多くの永久歯が生え揃い、歯並びと噛み合わせが本格的に形づくられる重要な時期です。この段階になると、成長による大きな変化が落ち着き、歯の位置やあごのバランスが今の形として固定されやすくなります。そのため、この時期は矯正治療の効果が比較的安定しやすい時期の一つといわれています。見た目の変化だけでなく、噛む力や歯の役割がしっかり発揮されるようになるため、将来の口腔環境にも大きな影響を与える大切なステージです。

 

永久歯が揃ってわかる本来の噛み合わせ

永久歯が生え揃うと、これまで曖昧だった噛み合わせが明確になります。前歯・犬歯・奥歯それぞれが役割を持ち、しっかり噛んだり切ったりすりつぶしたりするためのバランスが見えてくるため、小さなズレが大きな違和感につながることもあります。
たとえば、前歯が出ている・受け口になっている・奥歯の位置が左右で違う・歯列が狭くてガタつきがあるなど、これまでの成長では判断しづらかった問題が表に出てきます。この時期に歯並びを整えることで、噛む力が効率よく働き、むし歯や歯周病のリスク軽減にもつながります。永久歯列が整うと歯の動きが安定するため、治療の計画も立てやすくなります。

 

ワイヤー矯正・マウスピース矯正の選択肢が広がる

12〜15歳は「子どもの治療」と「大人の治療」の中間にあたり、選べる矯正装置の種類がぐっと増える時期です。従来のワイヤー矯正は細かな調整がしやすく、複雑な歯並びにも幅広く対応できます。一方、透明で取り外せるマウスピース矯正は、目立ちにくく衛生管理がしやすいという特徴があり、学校生活や部活動のある年代にも向いています。
どちらが適しているかは歯並びの状況や生活スタイルによって変わりますが、永久歯が揃っていることで正確な診断がしやすく、装置の選択肢の幅が広がるのがこの年代の強みです。特に、軽度〜中等度の歯並びの乱れにはマウスピース矯正が選ばれることも増えています。

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治療期間・負担が安定しやすい年代

この時期の矯正治療は、成長がある程度落ち着いているため予測が立てやすく、治療期間も計画通りに進みやすい傾向があります。歯の根の形成も整い、装置による力が効率よく伝わるため、無理なく歯を動かすことができます。
また、学校行事や部活動など生活リズムが安定してくるため、矯正装置の管理もしやすく、治療の成功率が高まる時期でもあります。治療中の痛みや違和感も個人差はありますが、慣れてくるとストレスが少なくなるケースが多いとされています。
12〜15歳は、本格矯正を始めるのに適している時期の一つといえるでしょう。歯並びを整えることで見た目の印象だけでなく、噛む力・発音・口腔機能の向上など、多くのメリットが見込まれます。

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6. 年齢別に変わる「治療目標」― 早期治療と本格治療の違い

子どもの矯正と一口にいっても、年齢によって治療の目的やアプローチは大きく異なります。成長途中の段階ではあごの発育を整えることが主な目的となり、永久歯が生え揃ってくると歯の位置を正確に動かすことが中心になります。どちらも大切ですが、それぞれの時期に合った治療を行うことで、将来の負担を減らし、より安定した噛み合わせにつなげることができます。この章では、早期治療と本格治療の違いをわかりやすく整理していきます。

 

早期治療(Ⅰ期治療:乳歯〜生え替わりの時期)の目的

早期治療は、乳歯列期〜混合歯列期にかけて行われる治療で、主にあごの成長を整えることを目的としています。具体的には、上あごが狭くて呼吸しづらい状態を改善したり、受け口や開咬など骨格的な問題を早期にコントロールしたりすることが含まれます。
この段階で行う治療は、歯そのものを大きく動かすのではなく、成長の力を利用しながら土台となる骨格のバランスを整えるものが中心です。取り外し式の装置を使ったり、生活習慣の改善を組み合わせたりして、今後の生え替わりがスムーズに進むよう導く役割があります。
早期治療はすべての子に必要ではありませんが、この時期にしかできないアプローチがあるため、適切に見極めることが後の治療期間や負担を大きく左右します。

 

本格治療(Ⅱ期治療:永久歯が揃ってから行う治療)の目的

本格治療は、永久歯がほぼ生え揃ってから行う矯正治療で、歯一本ずつの位置を細かく動かしながら噛み合わせを最終的に整えていく段階です。ここではワイヤー矯正やマウスピース矯正など、より精密な調整が可能な装置が選択されます。
この時期は成長がある程度落ち着いているため、治療計画が立てやすく、歯の移動も安定して進みやすいのが特徴です。前歯だけでなく奥歯の噛み合わせまでしっかり整えることで、見た目だけではなく噛む力や発音、歯の寿命にも影響します。
早期治療を行わなかったとしても、この時期の本格治療で十分改善できるケースは多くありますが、骨格的な問題が強い場合はⅠ期治療と組み合わせることでよりよい結果につながります。

 

年齢ごとに変わる「できること・できないこと」

早期治療と本格治療の違いを理解するうえで大切なのは、年齢によってできることが異なるという点です。成長期はあごの骨が柔らかく変化しやすいため、骨格的な問題へのアプローチが得意です。一方、成長が落ち着いてくると骨格の修正は難しくなるものの、歯の細かな移動には適しています。
つまり、子どもの矯正は「いま何ができる時期なのか」を見極めることが重要です。成長に任せて自然に治る場合もあれば、今しかできない治療が必要なこともあります。逆に、慌てて治療を始めず経過観察が適している場合もあります。
子どもの矯正は、年齢・成長・習慣・骨格のバランスを総合的に判断しながら、最適なタイミングを選ぶことで効果を最大限に引き出すことができます。

7. 子どもの矯正に関わるリスク要因を正しく理解する

子どもの歯並びは、遺伝だけで決まるわけではありません。生活習慣や成長のリズム、さらには全身の健康状態など、さまざまな要因が歯並びや噛み合わせに影響します。特に、日常の中で見過ごされやすいクセや健康状態に関わる習慣は、成長期の子どもにとって大きな意味を持ちます。この章では、歯並びの悪化につながりやすい要因を整理し、どんな点を意識して見守るとよいのかをわかりやすく紹介します。

 

歯並び以外のリスク要因を知る

子どもの矯正を考える上で、歯の位置やあごの成長だけでなく、生活習慣に目を向けることも大切です。たとえば、口呼吸が続くと口周りの筋肉がうまく働かず、上あごの発育が妨げられることがあります。また、舌の位置が常に低い状態が続くと、歯列の幅が狭くなり、前歯が押し出されやすい状態になることもあります。
さらに、食事中にあまり噛まずに飲み込む癖、柔らかいものばかりを食べる傾向、頬杖をつくなどの姿勢のクセも、あごのバランスに影響を与える可能性があります。矯正治療が必要かどうかだけではなく、こうした環境要因を整えることも、将来の歯並びを守るための重要なポイントになります。

 

年齢や生活習慣による影響

子どもの成長には個人差があり、同じ年齢でも歯の生え替わりのペースやあごの成長スピードが大きく異なります。早く生え替わる子もいれば、12歳を過ぎてからゆっくり永久歯が揃う子もいます。
また、日常生活の習慣も歯並びに影響します。姿勢が悪いと舌や顎の位置が変わり、噛み合わせにも負担がかかりやすくなります。睡眠中のクセ(横向きで強く押し付ける、うつ伏せ寝など)も、成長中のあごの形に影響することがあります。
こうした要因は、矯正治療を行うタイミングや治療方法の選択にも関係するため、日常のちょっとした変化に気づくことがとても重要です。年齢の数字だけでは判断できない理由がここにあります。

 

家庭で気を付けたいポイント

子どもの歯並びを守るためには、家庭でできる小さなことが大きな効果を生むことがあります。たとえば、よく噛んで食べる習慣をつけることは、あごの発育を促し歯が並ぶスペースを確保するために非常に有効です。
また、口を閉じる意識を育てることや、舌の正しい位置(上あごの天井付近)を知ってもらうことは、口呼吸や舌の癖を改善する助けになります。テレビやゲームに夢中になりすぎると姿勢が崩れやすいため、座り方や頭の位置にも注意を向けるとよいでしょう。
家庭でできる工夫は、矯正の必要性を減らしたり、治療が必要になったときにスムーズに進められたりするための大切な土台になります。子どもの成長に合わせて、無理のない範囲で習慣づけをしていくことが欠かせません。

8. 歯並びと口の健康、両方を守るには ― 長期的な口腔環境を育てる考え方

子どもの矯正は、歯の見た目を整えることだけが目的ではありません。噛む力、歯ぐきの健康、呼吸や姿勢など、広い意味での「口腔機能」を育てることが重要なポイントです。歯並びが整えば自然と健康になるのではなく、健康な土台があるからこそ歯並びや噛み合わせも安定していきます。この章では、歯並びと口の健康を総合的に守るために大切な視点をわかりやすくまとめていきます。

 

歯並びと歯ぐきは密接に関係している

歯並びが悪いと、特定の歯に強い負荷がかかって歯ぐきに炎症が起きやすくなることがあります。例えば、噛む位置がずれていると片側ばかりで噛む習慣がつき、使われていない側の歯ぐきは弱くなりやすい傾向があります。
また、歯と歯が重なっている部分は磨き残しが増え、歯ぐきが腫れたり出血しやすくなったりと、歯周トラブルのリスクが高まります。子どものうちは大人のような重度の歯周病は少ないとされますが、軽い炎症でも放置すると将来のリスクにつながることがあります。歯並びを整えることは、将来の歯ぐきの健康を守る大切な投資であり、口全体のバランスを整える基礎にもなります。

 

歯並びだけでなく生活全体を整える視点

歯並びを維持するには、普段の生活習慣が大きな役割を果たします。たとえば、口呼吸が続くと口の中が乾燥しやすく、歯ぐきが炎症を起こしやすい状態になります。これは歯並びの悪化だけでなく、口腔内環境を不安定にする原因にもなります。
また、姿勢も重要なポイントです。猫背になると舌の位置が下がり、重力によって口が開きやすくなります。その結果、歯並びや噛み合わせに影響が出るだけでなく、歯ぐきにも負担がかかります。
生活全体を整えることは、矯正治療の効果をより安定させ、治療後の後戻りを防ぐうえでも欠かせません。毎日の習慣が歯並びをつくる、という視点を持つことが大切です。

 

長期的な口腔健康のための継続ケア

歯並びと歯ぐきの健康を守るためには、継続的なケアが不可欠です。矯正治療が終わった後も、定期的なチェックを続けることで、噛み合わせのズレや歯ぐきの炎症を早期に発見できます。
また、歯みがきの習慣を身につけることや、フロス・歯間ブラシを無理のない範囲で取り入れることも効果的です。子どものうちから丁寧なケアの習慣を身につけることは、大人になってからの歯周病やむし歯のリスクを大きく減らします。
矯正治療は療したら終わりではなく、良い状態を維持するためのスタートラインでもあります。歯並びと口の健康、どちらも大切にする継続ケアが、長期的な口腔環境を守る一番の近道です。

9. 子どもの矯正でよくある質問Q&A(疑問と不安をやさしく整理)

子どもの矯正について調べていると、「いつ始めるのが正解?」「うちの子でもできる?」「痛みや負担は?」といった疑問が次々に出てくるものです。ネットにはさまざまな情報があふれていますが、子どもの成長や生活リズムは一人ひとり異なるため、一般論と実際のケースが合わないこともあります。この章では、とくに多い質問を取り上げ、できる限りわかりやすく整理していきます。

 

歯ぐきが弱い子でも矯正はできる?

子どもの歯ぐきは大人ほど硬くなく、成長とともに柔らかさが変化します。そのため「歯ぐきが弱いと矯正できないのでは?」と心配されることがあります。しかし、子どもの矯正は成長を利用するため、過度に歯ぐきへ負担をかけるものではありません。
ただし、むし歯や歯肉炎がある状態のまま矯正を始めると、装置の管理が難しかったり、噛む力が不均一になったりして負担が大きくなる可能性があります。大切なのは歯ぐきが弱いかどうかではなく、口の状態が健康に保たれているかです。普段のケアができていれば、ほとんどの子は適した方法で矯正を進めることができます。

 

歯みがきは難しくなる?嫌がらない?

矯正治療を始めると、歯みがきが難しくなるというイメージを持つ方は少なくありません。たしかにワイヤー装置の場合は磨きにくくなる部分がありますが、子どもの矯正では取り外せる装置を使用するケースも多く、普段通りの歯みがきができることもあります。
また、子どもが歯みがきを嫌がるのは、磨く動作そのものより「何をされているかわからない」「痛そう」といった不安が原因であることも多いです。装置を見せながら説明したり、短時間から慣れていくことで、苦手意識を減らせるケースがほとんどです。治療を進めるうえで大切なのは、子どもが前向きに取り組める環境づくりであり、矯正そのものが必ずしもハードルになるわけではありません。

 

治療中の痛みはある?どんな負担がある?

矯正治療では歯が動くときに軽い違和感や痛みが出ることがありますが、成長期の子どもは骨が柔らかく、歯の動きに順応しやすい特徴があります。そのため、大人の矯正と比べて痛みが軽い、または短期間で慣れることが多いとされています。
ただし、装置の種類や歯並びの状態によって感じ方は異なり、慣れるまで一時的に食べにくさや話しにくさが出ることもあります。しかし多くの場合、数日〜1週間ほどで不快感は落ち着きます。
重要なのは、無理のない計画で進め、日常生活に支障が出にくい方法を選ぶことです。子どもは適応力が高いため、周りのサポートがあれば治療をスムーズに乗り越えることができます。

10. 成長に合わせた最適な矯正を選ぶ ― 思春期以降に広がる選択肢とマウスピース矯正という新しい方法

ここまで、子どもの成長段階ごとに見られる歯並びや噛み合わせの変化、そしてその時期に適した治療の考え方をまとめてきました。最終章となるこの章では、永久歯が揃い始める思春期以降にどのような治療選択肢が広がるのかを整理します。特に最近は、透明で取り外しができるマウスピース矯正が選択肢として増えており、日常生活との両立がしやすい点から注目されています。従来の矯正との違いを知ることで、より納得した形で治療を選びやすくなります。

 

永久歯が整いはじめる時期に広がる治療の選択肢

永久歯が揃い始めると、歯並びの状態がより明確に見えてきます。この段階では、歯一本ずつの細かな位置関係や噛み合わせのバランスが把握しやすくなるため、本格矯正の選択肢もいっそう広がります。
従来のワイヤー矯正は、複雑な歯並びにも幅広く対応できる強みがあります。一方で、学校生活、部活動、日常の食事や見た目の面で負担を感じやすい子どももいます。
そこで注目されているのが、透明で目立ちにくいマウスピース矯正です。必要に応じて装置を取り外せるため、食事や歯みがきのストレスが少なく、思春期の子どもでも続けやすいという特徴があります。

 

マウスピース矯正のメリットと注意点

マウスピース矯正は、装置が透明で目立ちにくく、学校や友人との生活で気になりにくいというメリットがあります。また、取り外して食事や歯みがきができるため、口腔内を衛生的に保ちやすい点も大きな魅力です。
さらに、ワイヤー矯正と異なり金属のトラブルが少ないため、口内を傷つける心配も軽減されます。スポーツや楽器を扱う子どもでも使いやすいという声もよく挙げられます。
ただし、自分で装置を外せてしまうため、決められた時間しっかり装着できるかがとても重要です。思春期以降は自立心が育つ時期でもあるため、本人の意思で管理できるタイプの子には特に向いているといえます。

 

永久歯列期の矯正でめざすゴール

永久歯列が整いはじめる思春期以降の矯正は、見た目を整えるだけでなく、噛む力・発音・口腔機能の向上を含めた「長期的に健康な状態づくり」をめざします。歯の角度や位置だけでなく、上下の歯がどのように噛み合うかを調整することで、将来のむし歯や歯周病のリスクを減らし、歯をできるだけ長く保ちやすくすることにもつながります。
このように、思春期以降の矯正は仕上げの段階ともいえます。従来型のワイヤー矯正か、透明のマウスピース矯正か──どちらが適しているかは、歯並びや生活環境によって変わりますが、透明で衛生的な特徴を持つマウスピース矯正(インビザライン)は、近年ますます選ばれる機会が増えています。
自分に合った方法を選び、健康で美しい歯並びを長く維持していくことが、将来の口腔環境を守る大切なステップになります。

大人の矯正について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

 

 

 

 

神奈川県伊勢原市の
見えない矯正歯科治療専門外来/マウスピース矯正(インビザライン)
『 つじむら歯科医院 伊勢原 』
住所:神奈川県伊勢原市小稲葉2204−1
TEL:0463-95-8214

 

【監修者情報】
つじむら歯科医院グループ総院長 辻村 傑 

《公式facebookアカウント》

【略歴】
1993年 神奈川歯科大学 卒業
1995年 つじむら歯科医院 開業
1997年 医療法人社団つじむら歯科医院 開設
2008年 神奈川歯科大学生体管理医学講座 薬理学分野大学院
2010年 南カリフォルニア大学卒後研修コース修了
2010年 南カリフォルニア大学客員研究員
2010年 南カリフォルニア大学アンバサダー(任命大使)
2012年 ハートフルスマイルデンタルクリニック茅ヶ崎 開業
2012年 UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校卒後研修コース修了
2013年 インディアナ大学 歯周病学インプラント科客員講師
2014年 インディアナ大学医学部解剖学 顎顔面頭蓋部臨床解剖 認定医
2017年 iDHA 国際歯科衛生士学会 世界会長就任
2020年 iACD 国際総合歯科学会 日本支部会長

【所属】
IIPD国際予防歯科学会認定医
日本抗加齢医学会認定医
日本歯科人間ドック学会認定医
日本口腔医学会認定医
セカンドオピニオン専門医
DGZI国際インプラント学会認定医
日本咀嚼学会会員
日本保存学会会員
日本全身咬合学会会員
日本口腔インプラント学会会員
国際歯周内科学研究会会員
日本口腔内科学研究会会員
日本床矯正研究会会員
神奈川矯正研究会会員
日本臨床唾液学会会員
NPO法人歯と健康を守ろう会会員
日本ヘルスケア歯科研究会会員
伊勢原市中央保育園学校歯科医
日本食育指導士
健康咀嚼指導士

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