コラム

2025.12.12

噛み合わせが悪いとどうなる?気づきにくいサインと放置のリスク

噛み合わせが悪いとどうなる?気づきにくいサインと放置のリスク

噛み合わせは、見た目だけでなく「歯の寿命」や「歯ぐきの健康」にも大きく関わっています。しかし、噛みづらさや顎のだるさといったサインは、疲れや年齢のせいと勘違いして放置されがちです。
本記事では、噛み合わせが悪いときに現れやすい気づきにくいサインや、放置した場合のリスク、歯ぐき・歯並びを守るための考え方まで、やさしく解説します。ご自身やお子さまのお口の状態を見直すきっかけとして、ぜひ最後までご覧ください。

1.噛み合わせの乱れは静かに進むトラブル— まず知っておきたい基礎知識

噛み合わせの乱れは、はっきりした痛みが出ないまま進行することが多く、自分では気づきにくい点が特徴です。子どもの場合は成長による変化と混同され、大人では疲れやストレスと誤解されることもあります。わずかなズレでも歯や顎に負担が積み重なるため、まずは噛み合わせが乱れる仕組みと、その影響を正しく理解しておくことが、長い目で見た口の健康につながります。

噛み合わせが悪いとはどんな状態?

噛み合わせが悪いというと「歯並びがデコボコしている状態」を想像しがちですが、実際にはもっと広い意味を持ちます。上下の歯がきちんと噛み合わず、食べ物を噛む位置が毎回安定しない場合や、特定の歯だけが強く当たってしまう状態も含まれます。こうした偏りは力の集中を生み、見た目には分かりにくくても歯のすり減り・欠け・しみる症状などを引き起こすことがあります。噛み合わせは骨格だけでなく、生活習慣や成長の段階でも変化するため、誰にでも起こりえる問題といえます。

日常生活で気づきにくい理由

初期の噛み合わせのズレが見過ごされやすいのは、人が無意識に噛みやすい動きに順応してしまうからです。片側だけで噛むクセがいつの間にか習慣化し、多少の違和感でも適応できてしまうため、異常に気づきにくいのです。また、噛むときの力はゆっくり均等に見えて、実際には瞬間的に大きな負荷がかかっていることがあります。これが気づかないうちに歯や顎を疲れさせ、朝の顎のだるさや頭の重さとして現れることもあります。子どもの場合は「ゆっくり食べる」「いつも同じ側で噛む」といった変化が成長の個性と受け取られがちで、発見がさらに遅れる傾向があります。

子ども〜大人まで誰でも起こりうる口のズレ

噛み合わせの乱れは特定の年齢層だけのものではなく、子どもにも大人にも起こり得ます。子どもは顎が成長途中のため、歯が並ぶスペース不足やクセ(頬杖・口呼吸・指しゃぶり)が影響しやすく、噛み合わせが変化しやすい時期です。一方で大人の場合も、ストレスによる食いしばり、過去の治療跡の変化、加齢による歯ぐきの後退など、さまざまな要因が噛み合わせを乱すことがあります。いずれも初期は症状が目立たないため放置されやすいという共通点があります。静かに進む変化を見逃さず、早めに気づくことが、将来の歯の寿命を守る大切な鍵になります。

2.気づかないうちに出る初期サインとは

噛み合わせの乱れは、はっきりした痛みとして現れにくいため、日常生活の些細な変化に気づくかどうかが早期発見のポイントになります。「なんとなく噛みづらい」「口を開けると少し違和感がある」といった小さなサインは、本人が慣れてしまうことで見逃されやすい傾向があります。特に子どもは自覚症状を言葉にしにくいため、食事中のクセや表情の変化など、周囲の気づきが大切になります。初期サインを知っておくことで、噛み合わせの乱れを早い段階で察知し、悪化を防ぐきっかけにつながります。

食べ物が噛みにくい・片側ばかりで噛む

噛み合わせが乱れ始めたとき、最も早く現れやすいのが噛みにくさです。本人が自覚する場合もありますが、多くは「何となく右(または左)ばかりで噛んでいる」という無意識のクセとして出てきます。これは片側の歯が噛みやすく、反対側に微妙なズレや痛みがあると、無意識に負担の少ない方向に逃げてしまうためです。片側だけで噛む習慣が続くと、歯への負担が偏るだけでなく、顔の筋肉の使い方にも左右差が生じ、さらに噛み合わせの乱れを助長することがあります。特に子どもは「噛みにくい」と感じても言葉にできず、単に好きな側で噛んでいるように見えることがあります。食事中に左右の動きをよく観察することで、早く異変に気づける場合があります。

歯のすり減りが左右で違う

噛み合わせの乱れは、歯のすり減り方にも表れます。たとえば、左右の奥歯の高さがわずかに違って見えたり、特定の歯だけ角が丸くなっていたりする場合、噛む力が均等に伝わっていない可能性があります。人の噛む力は非常に強く、小さなズレでも歯に大きな負担がかかります。そのため、無意識のうちに特定の歯だけが強く当たり、歯の表面に摩耗が起こりやすくなるのです。また、ストレスによる食いしばりや歯ぎしりが加わると摩耗はさらに進み、痛みや欠けにつながることもあります。鏡で歯を見る習慣がないと気づきにくいサインですが、歯科医院での定期検診で早期発見されるケースも多いポイントです。

朝起きると顎がだるい・口が開きにくい

朝の顎のだるさや口の開けづらさも、噛み合わせの乱れを示すことがあります。特に寝ている間は食いしばりや歯ぎしりが起こりやすく、噛み合わせのズレがあると負荷がさらに強くかかります。起床時に「顎が疲れている」「口が開けにくい」と感じるのは、夜間に顎の筋肉が過度に働いていたサインです。これが続くと顎関節に負担が積み重なり、音が鳴る・顎が引っかかるなどの症状が現れることもあります。子どもでも同様の傾向は見られ、成長期の顎に過度な負担がかかると、歯列や噛み合わせの発育に影響することもあります。「朝だけ顎が疲れる」という一見軽い症状も、実は噛み合わせの乱れの早期サインである可能性があります。

当てはまるサインはありましたか?
噛み合わせのチェックは、早めの相談が安心につながります。

3.歯槽膿漏になりやすい歯並びの特徴

噛み合わせや歯並びの乱れは、清掃性の低下や特定の歯への負担につながり、気づかないうちに歯ぐきへ影響を及ぼします。見た目の問題に見えて、実は将来的な歯周トラブルのリスクが高まる場合も少なくありません。ここでは、特に歯槽膿漏になりやすい歯並びの特徴を理解し、早めに対策のヒントをつかむことを目的としています。

叢生(ガタガタの歯並び)

叢生は、歯が重なり合ったりねじれたりすることでデコボコに並んでいる状態を指します。この歯並びでは、歯ブラシの毛先が届きにくい部分が多く、汚れが残りやすいのが大きな問題です。特に重なっている部分は歯垢がたまりやすく、通常より短い期間で細菌が増え、歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。歯槽膿漏の初期段階で見られる「歯ぐきの腫れ」や「出血」は、叢生の場合に特に起こりやすい症状です。また、デコボコの歯並びは噛む力のバランスも不均一にしやすく、強い力が一部の歯に集中すると歯ぐきや骨に負担がかかります。これが進行すると、歯が動いたり揺れたりする原因にもつながりかねません。見た目の問題だけでなく、長期的な口腔の健康に影響を与える歯並びといえます。

開咬(奥歯しか噛まない状態)

開咬は、奥歯は噛んでいるのに、前歯が噛み合わずに上下の歯の間に隙間がある状態です。このタイプの噛み合わせでは、食べ物を前歯でしっかり噛み切ることが難しいため、奥歯ばかりに負担が集中します。奥歯はもともと強い力を受け止める構造ですが、それでも過度な負荷が続くと歯ぐきや骨が疲弊し、歯槽膿漏のリスクが高まります。また、前歯の清掃が不十分なまま空いた隙間に舌癖(舌で歯を押してしまうクセ)があると、歯ぐきが慢性的に刺激を受け、炎症が続きやすくなることもあります。開咬は食事の効率が低下するだけでなく、歯周組織への負担という側面からも注意が必要な噛み合わせです。

交叉咬合(すれ違った噛み合わせ)

交叉咬合は、一部の歯が通常とは反対側に噛んでしまう状態で、左右のバランスが崩れやすいのが特徴です。この噛み合わせでは、上下の歯が接触する位置が偏りやすく、特定の部位に強い噛む力がかかります。これが続くと歯ぐきや骨への負担が蓄積し、炎症が慢性化しやすい環境がつくられます。さらに、歯の接触が不規則なため磨き残しが出やすく、歯垢がたまりやすいという清掃面での問題もあります。また、顎の動きが左右どちらかに引っ張られるようになり、発育中の子どもでは顎の成長方向に影響が出ることもあります。見た目では気づきにくい場合もありますが、歯槽膿漏のリスクを高める歯並びのひとつです。

 

4.どんな人が歯槽膿漏になりやすいのか

歯槽膿漏は、歯並びだけでなく生活習慣や体質の影響も受けるため、「自分には関係ない」と思っている人でも知らないうちにリスクが高まっていることがあります。とくに、毎日のクセやストレス、体の健康状態は口の中と密接につながっています。ここでは、歯槽膿漏が起こりやすくなる要因を知り、早めに対策へつなげるための視点を整理します。

歯並び以外のリスク要因:喫煙・ストレス・口呼吸・糖尿病など

歯槽膿漏は「歯磨き不足だけが原因」と思われがちですが、それ以外にも注意すべき要因が多く存在します。まず大きなリスクとなるのが喫煙です。たばこに含まれるニコチンは血流を悪くし、歯ぐきが炎症を起こしていても腫れにくい状態になるため、進行に気づきにくいのが問題点です。さらにストレスが強い人は無意識の食いしばりや歯ぎしりが起こりやすく、歯ぐきや骨に過度な力が伝わって炎症を悪化させやすくなります。

また、口呼吸もリスクのひとつです。口の中が乾燥すると細菌が増えやすく、歯ぐきが炎症を起こしやすい環境になります。子どもでもアレルギーや鼻づまりが原因で口呼吸になることがあり、長期間続くと歯並びや噛み合わせにも影響し、結果として歯槽膿漏の土台をつくってしまうことがあります。さらに、糖尿病の人は免疫反応が低下し炎症が収まりにくいため、歯周病が進行しやすいことが知られています。これらの習慣や体質の要因が重なると、歯並びが良くても歯槽膿漏のリスクは高まります。

年齢・生活習慣・セルフケアの影響

歯槽膿漏は年齢とともに増える傾向がありますが、実際には年齢そのものが原因ではなく、長年の生活習慣の積み重ねが大きく関わっています。若い人でも生活リズムが不規則で食生活が偏っていたり、間食の習慣が多かったりすると、歯ぐきが炎症を起こしやすい環境がつくられます。また、歯磨きは毎日していても、磨くクセや順番の偏りによって清掃が足りない部分ができると、そこから細菌が増殖し炎症を引き起こします。

特に最近では、忙しさによってセルフケアが短時間で済まされることも多く、「磨いたつもり」の状態で汚れが残るケースも少なくありません。さらに、夜更かしや睡眠不足が続くと免疫力が下がり、歯ぐきの炎症が長引きやすくなります。年齢だけを見るのではなく、毎日の積み重ねを見直すことで、歯槽膿漏のリスクは大きく変わります。

5.インビザライン矯正とは?目立ちづらく快適な新しい選択肢

矯正治療と聞くと「金属のワイヤーで目立つ」「痛みが心配」というイメージを持つ方も少なくありません。近年は、透明で取り外しができるマウスピース矯正が普及し、装置の見た目や生活への影響を最小限にしながら歯並びを整えられる選択肢が広がっています。ここでは、その代表的なシステムのひとつであるインビザラインの特徴を、従来の矯正との違いを交えて解説します。

ワイヤーと比較した特徴

従来のワイヤー矯正は、金属のブラケットとワイヤーを歯に固定して歯を動かす方法です。矯正力が高く幅広い症例に対応できる一方で、「見た目が気になる」「装置が外れないため食事や歯磨きが大変」という声も多くありました。それに対してインビザラインは、透明のマウスピースを段階的に交換しながら歯を動かしていく仕組みです。透明な素材のため口を開けてもほとんど目立たず、写真や会話の場面でも自然に過ごせます。

また、口の中の金属部分が少ないため、装置が頬や唇に当たって痛むといったトラブルが起こりにくいのも特徴です。ワイヤー矯正と比べて歯の動かし方や得意な症例は異なりますが、見た目のストレスが少ないことは多くの人にとって大きなメリットだと感じる方も多いです。

取り外し可能だから清潔に保ちやすい

インビザラインの大きな特徴のひとつが「自分で取り外せる」という点です。食事のときには外せるため、普段どおりに食事が楽しめ、食べ物が装置に絡まる心配もありません。これは食事量が多い学生や、会食が多い社会人にとっても生活の負担を減らす要素になります。

さらに、歯磨きのしやすさという面でも利点があります。ワイヤーがあるとブラシが届かない場所が生じやすく、磨き残しからむし歯や歯ぐきの炎症が起こることがありますが、マウスピース矯正なら普段どおりの歯磨きが可能です。そのため、治療中に口の中を清潔に保ちやすく、長期間の治療でも衛生管理がしやすいのが特徴です。

ただし、マウスピースは1日20時間以上の装着が推奨されるため、自己管理が必要になります。外したまま忘れてしまうと治療計画どおりに進まないことがあるため、生活リズムに合わせて装着を続ける習慣づくりが大切です。

治療中の口腔ケアがしやすい利点

矯正治療中は、歯が動く過程で汚れがたまりやすく、普段よりも丁寧なケアが必要になります。インビザラインでは装置そのものを外して洗えるため、清掃性が高いことが大きなメリットです。マウスピースは専用の洗浄剤やぬるま湯で手軽に洗浄でき、清潔な状態を保ちやすいので、治療中のにおいや細菌の付着を防ぐことにもつながります。

また、歯並びが少しずつ整っていくことで、ブラシが届きにくかった部分が磨きやすくなる場合もあります。これは歯ぐきの炎症が起こりにくくなる理由のひとつとして挙げられ、長期的な口腔環境の改善にも関係しています。もちろん、すべての症例に適しているわけではありませんが、生活の負担を抑えながら矯正治療を進めたい方にとって、検討したい選択肢のひとつと言えます。

インビザラインについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

6.インビザラインで歯槽膿漏リスクを減らせる理由

歯槽膿漏は、歯並びの乱れや清掃のしづらさ、噛む力の偏りなど、さまざまな要因が重なって進行しやすくなります。インビザラインのようなマウスピース矯正は、歯並びを整えることでこれらのリスク要素を少しずつ減らす方向に働くことがあります。ここでは、その理由をわかりやすく整理します。

歯並びを整えることで清掃しやすくなる

歯槽膿漏の大きな原因のひとつは、歯ぐき近くの清掃が行き届かず、プラーク(細菌のかたまり)が停滞してしまうことです。叢生のように歯が重なっている部分では、歯ブラシの毛先が届きにくく、磨き残しが起こりやすくなります。インビザラインなどの矯正治療で歯並びが整ってくると、歯と歯の間のすき間や奥歯のくぼみが磨きやすくなり、プラークを取り除きやすい環境に近づきます。

また、マウスピースは食事のたびに外せるため、治療中にしっかり歯磨きを行える点も特徴です。ワイヤー矯正ではブラケット周りに汚れが残りやすく、歯ぐきの炎症につながることがありますが、インビザラインでは普段どおりに歯磨きができるため、清掃性の面で大きなメリットがあります。清潔な状態を保ちやすいことが、結果として歯ぐきの健康維持に良い影響を与える場合があります。

正しい噛み合わせで歯ぐきへの負担も軽減

噛み合わせが乱れていると、特定の歯に強い力が加わりやすく、その歯を支える歯ぐきや骨に負担が蓄積されます。これが長期間続くと歯槽膿漏の悪化につながることがあります。マウスピース矯正で上下の歯の位置関係が整ってくると、噛む力が分散されやすくなり、一部の歯への過度な負担が軽減されることがあります。

また、偏った噛み合わせは顎の動きをスムーズに妨げ、無意識の食いしばりを引き起こす要因にもなります。食いしばりは歯ぐきや骨への負担を増やすため、歯周トラブルを助長することがあります。矯正によって噛み合わせが整うことで、顎の動きが自然になり、噛む力がバランスよく働きやすい環境が生まれます。ただし、すべてのケースで噛み合わせ改善が歯周状態の改善につながるわけではなく、歯科医師による総合的な診査が必要です。

矯正中も衛生管理しやすいから安心

矯正治療中は、歯が動く過程で一時的に汚れが付着しやすくなり、通常よりも丁寧なケアが求められます。インビザラインのように取り外し可能な装置は、マウスピース自体を清潔に保ちやすい点が特徴です。専用クリーナーや歯ブラシを使って簡単に洗浄でき、装置に細菌が付着しにくい状態を保つことができます。

さらに、マウスピースは薄くて滑らかな素材のため、歯ぐきへの刺激が少ないこともメリットです。装置による摩擦や圧迫で炎症が起こりやすい方にとっては、快適に治療を続けやすいという点も見逃せません。治療中に衛生環境を整えやすい点は、歯ぐきの健康維持のうえでも大切なポイントといえます。

7.歯周病が進んでいても矯正はできる?

歯周病がある状態で矯正治療を考えると、「治療を始められるのか」「進行した歯ぐきでも大丈夫なのか」と不安を感じる方は少なくありません。実際には、歯周病の進行度合いや骨の状態によって治療の順番や方法が変わることがあり、むしろ早めに状態を把握することが大切です。ここでは、一般的にどのような流れで判断されるのかをまとめます。

歯周病治療を優先する必要があるケース

歯周病は歯を支える骨が徐々に弱くなる病気で、炎症があるまま歯を動かすと負担がかかり、症状を悪化させる恐れがあります。そのため、歯ぐきに腫れや出血が見られる段階では、まず歯周病の治療を優先することが一般的です。歯石の除去やブラッシング指導、必要に応じて薬物療法などを行い、歯ぐきの炎症を抑えた上で矯正治療に移行する流れになります。

これは矯正を中断するという意味ではなく、口の中の土台を整えるための大切なステップです。歯周病が落ち着き、歯ぐきの状態が安定すると、矯正装置による歯の移動に伴う負担が軽減され、治療を安全に進めやすくなります。矯正治療と歯周治療は別々ではなく、互いに影響し合うため、最適な順序で進めることが重要です。

歯科医院の連携体制が重要

歯周病と矯正治療が同時に関わるケースでは、歯科医師同士の連携が欠かせません。歯周病専門の担当医が炎症の状態や歯周組織の強さを把握し、矯正担当医がその情報をもとに適切な治療計画を立てることで、安全性が高まります。特にインビザラインのようなマウスピース矯正は、歯の動き方を事前にシミュレーションするため、歯周状態に合わせて細かく調整しやすい利点があります。

また、矯正治療中も歯周病が再発しないよう、定期的なクリーニングや歯ぐきチェックが重要です。装置によっては歯の清掃性が変化することもあるため、矯正担当医と歯周病担当医が連携し、治療中のケアを継続していくことが必要になります。このように、複数の視点から診てもらえる体制は安心材料のひとつです。

歯ぐきの状態が安定すれば矯正も可能

歯周病があるからといって、必ずしも矯正治療ができないわけではありません。歯ぐきの炎症が治まり、支える骨が安定している状態になれば、慎重に計画を立てた上で矯正を進められるケースもあります。特にマウスピース矯正は、ワイヤー矯正に比べて力が弱く持続的にかかるため、歯周病経験者にとって負担が少ないと感じられることがあります。

とはいえ、歯周組織に不安がある場合は、歯の動かし方や治療期間に制限が生じることもあり、すべての方に同じ治療が適応できるわけではありません。重要なのは、現在の歯ぐきの状態を正確に把握し、治療に伴うリスクを理解した上で進めることです。歯周病と矯正を両立させるためには、定期的な通院と適切なセルフケアが欠かせません。

8.歯並びと歯ぐき、両方を守るには

歯並びと歯ぐきは別々の問題のように見えて、じつは強く結びついています。歯並びが乱れると磨き残しが増えて歯ぐきが炎症を起こしやすくなり、逆に歯ぐきの弱りが歯の位置の安定を妨げることもあります。どちらか一方だけを整えても、長期的な健康を守るには十分とはいえません。ここでは、両方を守るための考え方を解説します。

歯周病ケア×矯正=長期的な口腔健康の維持

歯周病のケアと矯正治療は、互いを補い合う関係にあります。歯ぐきが健康であるほど歯はしっかり支えられ、矯正によって受け止める力も安定しやすくなります。一方で、矯正治療によって歯並びが整うとブラッシングがしやすくなり、歯周病の原因となるプラークがたまりにくい環境に近づきます。

たとえば、叢生で磨きにくかった部分が矯正によって整うと、以前よりも歯ブラシが届きやすくなり、歯ぐきの炎症が起こりにくくなることがあります。反対に、歯周病が進行した状態で矯正を行うと、歯が動くたびに負担が大きくなり、治療が進みづらくなることもあります。そのため、口の中の状況に応じて「歯周病ケア→矯正治療」の順番が必要になることもあり、両方を並行して考えていく視点が重要です。

「見た目」だけでなく「歯の寿命」まで考えた治療方針

歯並びを整える目的は見た目の美しさだけではありません。歯がきれいに並ぶことで噛む力が分散し、一部の歯に負担が偏ることを防ぐ意味があります。これによって歯のすり減りや欠け、歯ぐきへの負荷を軽減し、結果として歯の寿命を長く保つことにつながる場合があります。

たとえば、出っ歯や受け口のように前後のズレが大きいタイプの歯並びでは、前歯に過度な力がかかってしまい、歯ぐきが下がりやすくなることがあります。歯並びを整えて正しい噛み合わせに近づけることで、これらの負担が和らぐこともあります。歯ぐきの炎症が起きにくい環境をつくり、歯を守る力を高めるためにも、見た目だけではなく「噛む機能」や「長期的な健康」を重視する治療方針が欠かせません。

9.よくある質問Q&A(インビザラインと歯周病編)

歯並びや歯ぐきに不安があると、矯正治療を始めるべきか迷う場面も多いものです。特にインビザラインのようなマウスピース矯正は特徴が分かりづらく、治療中のケアについて疑問を抱く方も少なくありません。ここでは、患者さまからよく聞かれる質問をもとに、一般的な考え方をまとめています。

歯ぐきが弱い人でも矯正できる?

歯ぐきが弱っている状態でも、必ずしも矯正ができないわけではありません。大切なのは、歯ぐきが炎症を起こしていないか、歯を支える骨が安定しているかという点です。炎症が続いている場合は、まず歯周病の治療を優先し、歯ぐきの状態を整えたうえで矯正治療に進むことが一般的です。

また、マウスピース矯正は比較的弱い力を持続的にかけて歯を動かすため、歯周病治療後の方でも選択肢となる場合があります。一方で、進行度や骨の状態によっては動かせる範囲に制限が生じることもあります。まずは現在の状態を評価し、口の中に合った治療計画を立てることが欠かせません。

歯みがきは難しくない?

インビザラインの特徴のひとつは、装置を取り外して清掃できる点です。食事や歯磨きの際にはマウスピースを外すため、ワイヤー矯正のように装置の周囲に汚れが残る心配が少なく、普段どおりのケアを行いやすいメリットがあります。これは歯ぐきがデリケートな方にとっても負担が少なく、衛生的な状態を保ちやすいポイントです。

ただし、マウスピース自体も清潔に保つ必要があります。ぬるま湯や専用洗浄剤での洗浄が推奨され、毎日のお手入れが欠かせません。また、装着時間が短くなると治療計画に影響することがあるため、外したままにしないよう自己管理も重要です。適切にケアすれば、治療中の衛生管理は難しくありません。

治療中に痛みはある?

矯正による歯の移動には多少の違和感が伴うことがあります。マウスピースを新しい段階に交換した直後などは、歯が押される感覚があり、人によっては軽い痛みを感じることもあります。しかし、多くの場合は数日で慣れ、日常生活に支障が出るほどの痛みになることは少ないといわれています。

また、インビザラインはワイヤーやブラケットのように金属が当たる部分がないため、頬や唇が擦れて痛むといったトラブルが起こりにくい傾向があります。もし強い痛みや不快感が続く場合は、マウスピースのフィットや噛み合わせの状態を確認するため、歯科医院で早めに相談することが安心につながります。治療中の変化は自己判断せず、専門家と共有することが大切です。

10.歯ぐきの不安を感じたら、まずは相談から

歯ぐきの腫れや出血、噛みにくさなどは、最初は些細な変化に見えても、放置すると複数のトラブルが重なりやすくなります。特に歯並びや噛み合わせが関係している場合、自分では気づきにくいため、早めに現状を確認しておくことが、将来の歯の寿命を守るための大切なステップです。ここでは、相談の流れや、どのような点を確認するのかを紹介します。

初診相談ではどんなことを確認する?

歯ぐきの不安がある場合、最初の相談では現在の歯並びや噛み合わせ、歯周病の進行度を確認するための基本的な診査が行われます。歯ぐきの状態を視診でチェックし、腫れや出血の有無、歯石の付着状況などを丁寧に確認します。また、レントゲンを用いて歯を支える骨の状態を把握することもあり、見た目だけでは分からない情報を得ることができます。

噛み合わせのズレが疑われる場合は、どう噛んでいるのか、どの歯に負担が集中しているのかといった点も確認します。これらの情報を組み合わせることで、今後の治療方針を安全に進めるための判断材料が揃います。まずは「今どうなっているのか」を知ることが、不安解消の第一歩です。

治療に進む前に知っておきたいポイント

歯ぐきの状態や歯並びの問題は、人によって原因も解決方法も異なります。そのため、治療の前には「どのような選択肢があるのか」「治療中にどのようなケアが必要なのか」といった点について説明を受けることが多いでしょう。歯周病がある場合には、まず炎症を抑える治療を優先することがありますし、歯並びの問題が大きい場合は矯正治療が検討されることもあります。

インビザラインのようなマウスピース矯正は、取り外して清掃できることから、治療中の衛生管理がしやすい特徴があります。歯ぐきがデリケートな方でも比較的取り組みやすい選択肢ですが、適応の可否は歯周状態や噛み合わせによって大きく異なります。自身の状態に合った治療を進めるためにも、疑問点をそのままにせず、気になることは相談時にしっかり確認することが大切です。

不安をひとりで抱えず、確かめることが第一歩

歯ぐきの違和感や噛みにくさは、時間が経つほど原因が複雑になり、改善までに時間がかかることがあります。特に噛み合わせのズレは自分では気づきにくいため、「様子を見る」だけでは見逃してしまうリスクがあります。相談を通じて現状を把握することで、必要なケアや治療の方向性が明確になり、将来的なトラブルを未然に防ぐきっかけにもなります。

治療を受けるかどうかをすぐに決める必要はありません。まずは自分の状態を知り、不安を整理することが大切です。歯ぐきの健康と歯並びのバランスは、長期的な口腔健康の要となります。気になるサインがあるときは、ひとりで悩まず専門家に相談することで、より納得のいく選択へつながっていくでしょう。

 

噛み合わせや歯ぐきのことで気になる症状があれば、まずはお気軽にご相談ください。

 

 

 

神奈川県伊勢原市の
見えない矯正歯科治療専門外来/マウスピース矯正(インビザライン)
『 つじむら歯科医院 伊勢原 』
住所:神奈川県伊勢原市小稲葉2204−1
TEL:0463-95-8214

 

【監修者情報】
つじむら歯科医院グループ総院長 辻村 傑 

《公式facebookアカウント》

【略歴】
1993年 神奈川歯科大学 卒業
1995年 つじむら歯科医院 開業
1997年 医療法人社団つじむら歯科医院 開設
2008年 神奈川歯科大学生体管理医学講座 薬理学分野大学院
2010年 南カリフォルニア大学卒後研修コース修了
2010年 南カリフォルニア大学客員研究員
2010年 南カリフォルニア大学アンバサダー(任命大使)
2012年 ハートフルスマイルデンタルクリニック茅ヶ崎 開業
2012年 UCLAカリフォルニア大学ロサンゼルス校卒後研修コース修了
2013年 インディアナ大学 歯周病学インプラント科客員講師
2014年 インディアナ大学医学部解剖学 顎顔面頭蓋部臨床解剖 認定医
2017年 iDHA 国際歯科衛生士学会 世界会長就任
2020年 iACD 国際総合歯科学会 日本支部会長

【所属】
IIPD国際予防歯科学会認定医
日本抗加齢医学会認定医
日本歯科人間ドック学会認定医
日本口腔医学会認定医
セカンドオピニオン専門医
DGZI国際インプラント学会認定医
日本咀嚼学会会員
日本保存学会会員
日本全身咬合学会会員
日本口腔インプラント学会会員
国際歯周内科学研究会会員
日本口腔内科学研究会会員
日本床矯正研究会会員
神奈川矯正研究会会員
日本臨床唾液学会会員
NPO法人歯と健康を守ろう会会員
日本ヘルスケア歯科研究会会員
伊勢原市中央保育園学校歯科医
日本食育指導士
健康咀嚼指導士

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